言葉は思考

 ずっとしゃべりかけてくれる子がいます。A君とします。内容はブロックで作ったロボットの説明です。戦いごっこの仲間に入っているのですが、説明をするだけでやりとりがありません。
 他の男の子とトラブルになりました。A君のルールに反した為、A君が怒ってしまったようです。A君しかそのルールは知りませんでしたが、Aくんはみんなが知っているように思えてしまうようです。当然、自分には非はないと考えています。
 しかし、相手の子は泣いているし、お母さんからは反省を促されていると、なんだか上手くいってないことは解り、しょんぼりした様子です。そして「ごめんね」を相手の子に伝えます。
 A君はやさしい子だと、思います。でも、わからないんです…なぜこうなったのか…が。
 他の場面では、A君その場でジャンプができず、動いてしまいます。悪気なく人と人の間の30cmを通り抜けます。わからないのです、真っ直ぐ立つことも、人との距離も、感覚として捉えられない。つまり、他者の感覚が自分の感覚と違うことも。
 でも、かしこい子なので「どうやら上手くいかない」ことがわかり、それはどうやら自分のせいかもしれないと思い始めています。同時に傷つきにもなっているんだと思います。
 彼はきっと、これからもたくさんの傷つきを経験していくのでしょう。そして大きくなっていく中で、頭で考えて、事象を分析して、他者を傷つけないように自分も傷つかないように生きていくことを学ぶのです。
 すべてを感覚ではなく、思考で動かしていくことはとても疲れます。
 
『言葉は思考』『思考は言葉』

 人は言葉を獲得することで、思考することができるようになったと聞きます。言葉以前は感じることをしてきました。
 「感じる」が不十分なままに言葉を獲得すると「考える」ことでカバーしようとします。もちろん、考えることは大切だけれども…「感じる」も大切。こうやって文章を書いているのも、感じたことを思考にくぐらせて表現しているのですから。バランスが大切。
 「感じる」が苦手だった子もいるでしょう。その子たちには、きっと言葉以前のコミュニケーションが必要なのだと思います。スキンシップやボールを行ったり来たりさせる非言語コミュニケーションですね。

 はじめの…「Aくんはずっとしゃべりかけてくれる」「説明ばかりする」もA君が他者とかかわりを求めている姿だったのです。きっと感覚が育つことで他者との相互的なやりとりもできると思います。A君の優しさが伝わりますように。

必要な方に届きますように。


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