見出し画像

【恋愛小説】私のために綴る物語(20)

第四章 うたかたの京都(5)

 きよはるは手拭いで多香子の目を塞いだ。そしてその男は何もせずにしばらく眺めていた。多香子はさっきの体の熱が時々暴発して、身体が波を打つと、「あぁ」と声を上げていた。

「いい眺めだ。私にはさっきの夜景よりも、こっちのほうが数倍良い」

 まずはと、きよはるはキスをしてきた。多香子はこの人のキスは気持ちがいいと思った。なじんでくるとそれだけで子宮の奥まで動き出す。もう、開いている足の間から何かが零れそうな気がした。足が閉じられないことが今更ながら辛かった。キスを止められ、離れるのでも寂しかった。

 また、唇に触れられた。受け入れようと口を開けると、冷たいもの、お茶が注がれた。慌てて飲み込むが、溢れたものが頬を伝った。

「零すとはお行儀が悪い」

 右の頬から耳をなめられると全身がゾワゾワしてきた。唇は首筋から胸の谷間から、へその脇を通って止まった。今度は指先が胸の形をたどると、堪えきれずあぁぁという声とともに反り返ろうとしたが、手足を縛られ逃げることができなかった。

「まるで楽器のようだ。感じが良いな」

 胸の膨らみに手をかけて揉みしだかれると、あえぎ声が止まらなくなった。つぼみの頂点を舌で転がされ、歯を当てて甘噛をされるとその刺激が脳や全身を駆け巡っていた。

「ひょっとしてイキそうなのか」
「うぅんうん」

 あまりの恥ずかしさに首を振りながら否定してみたが、身体を駆け巡る熱の前にひれ伏すしかなかった。

 腰に手を回されるだけでも声が出る。また胸をもてあそばれると、快感から逃げようと体が動く。その動きが余計に快感を運んできた。また甘噛されると、「いやぁ」と叫んでいた。

「嫌じゃないだろ。イキたくないのか」
「イキたい。イカせてください」

 官能の炎に、焼き尽くされそうになっていた多香子は哀願していた。

「あおい、これはお仕置きなんだ。お前はさっき自分勝手に感じた。もっと貪欲になっていいぞ。勝手にイカせないからな」
 草むらの割れ目に指を当てられていた。
「そこは嫌。止めて」
「タオルを敷いていて良かった。こんなにはしたなくお漏らししているとは。すごいぞ、びちゃびちゃだ」
「嫌。恥ずかしい」
「イカせてほしいんだろう」

 胸をしゃぶられ、敏感なところを撫でられると、もう無理だった。うっと声が出て身体が跳ね上がり、ひくひくと動きが止まらなくなった。あとは子猫のように鳴いていた。

「イッたのか。勝手にイクなって言っただろう。仕方がない後片付けをしなくては」

 指を茂みの中に入れていた。指を出し入れするとその動きに合わせて、声が上がった、小鳥のさえずりのような声は次第に大きくなっていた。すると、指は抜かれ代わりにザラッとしたものが差し込まれた。そしてすすられる音がすると、舐められていることがはっきりわかった。

「それだけは、嫌。止めて。お願い。やめてください」

 多香子の懇願はだんだん小さくなって、喘ぎ声に変わっていった。唇と舌を使って内側から刺激を受けると、快感の虜になっていた。最後に敏感なところに歯を当てられると、快感からも解き放たれて、崩れていた。

 きよはるは多香子の頭を抱きしめてなでていた。自分を取り戻した多香子は男の膝枕で、余韻を感じていた。

「とても素敵だった」
「壊れるかと、何度も」
「できれば壊したかったですね」
「売りとばしやすいからですか」
 もう多香子の冗談には、とりあうことはしなかった。
「そういえば、命令されるのが嫌いだと言うのは本当ですね」
 そう言って笑った。
「あれで、よく持ったものだ」
「いいえ。声を出し、陵辱されていることを認めてしまったら、秘密組織に入らなくてはいけなくなりそうでした」

 そう言って笑った多香子は色鮮やかに笑っていた。その笑顔に応えるように縛っているものを解いていった。全て解かれてタンクトップを脱ぐと、多香子は抱きついていた。

「私にご褒美をください。かりそめで良いので、慈しんでください」
「それが目的でしたか。わかりました。お望みのままにいたしましょう」
「このまま、入ってください。そしてキスを」

 多香子の動きに合わせて、腰を動かすと「あぁいい」と可愛らしい声が響いていた。

「あぁ、いや、止めて」
 その声に合わせて、きよはるは動きを止めた。
「本当に止めて良いんですか」
「うぅん、止めないで。もっとください」
「こうですか、それとも上になりたいですか」
 きよはるは、腰を突き上げていた。
「上に、して、ください」

 少し恥ずかしそうに言った。男の体が動いてあお向けになると、かんじるままにうごきだした。しなやかに欲望のまま動いた。

「うん、あぁ、あぁ」
 多香子は啼きだしていた。締め付けがきつく感じた男は動くのをやめた。

 そして、また一層の張りを見せた胸に、きよはるはむしゃぶりついていた。そして多香子を横にすると、二人共に果ていた。

「いい声でしたよ。やっぱり、貴女を私のものにしたい。その肌に縄を這わせたい。無理はわかっているんです。そもそも向いていないことは、よくわかりました」
「ふふふ。確かに今までにない体験がしたかった。実はこういうの初めてなんです。それで、思ったんです。貴方がしたいことと、大切な人がしてくれたことは似ているんです。ただ私は受け身ではなく、お互いにしたい。だからどうしても……。あの人とだめだったら、その時お願いします」
「やっぱり、そんな事かと。もう駄目ですよ。行きずりの男なんて。一応私で良かったと、言わせてください。もしどうしても、ほかの男が欲しくなったら、連絡ください。良い男を紹介します」
「やっぱり、秘密組織に売られるんですか」
「そういうことになりますね」
 そう言って男が笑った。

 二人で風呂に入り、隅から隅まで洗ってもらって、体を拭いてもらった。その後は一人で服を着た。お互いに転送用のアドレスだったが、交換すると多香子は部屋を出た。
 
 自分の部屋に戻り、裸になると痕跡のないことを確認してベッドに潜り込んだ。
 多香子はこういうことを知ってしまったら、正弘とできるかわからない気がしていた。スマホを眺めると、メッセージの確認など明日でいいと思っていた。激しい情事の余韻を一人で感じて、眠りについた。


サポートいただきますと、資料の購入、取材に費やす費用の足しに致します。 よりよい作品作りにご協力ください