【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~#42
9 薩長盟約(4) 明朝、グラバーのもとに行く支度をしていると、薩摩藩士がやってきた。
「今日はよろしく頼みます」
俊輔がまず挨拶をした。続けて聞多が昨日の回答として言った。
「昨日、薩摩の本国にご招待いただいた件ですが、私が参ることといたしました。こちらの伊藤は続けて銃器の購入をいたします」
手伝いの者はにっこり笑って言った。
「それは、良かった。井上さ、よろしく頼みます。ご家老のご帰国はあすです。ご同道いただくことになりますのでな」
「はい」
答える聞多の声は心なし