【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~#12
決行(1)
約束通り神奈川の旅籠に集まった皆は、景気づけに酒盛りを始めていた。すると用事を済ませて戻った山尾庸三が切り出した。
「なんかこの宿の周りに、取締方のような連中がいるようなんだが」
「なんだって、公儀のものだろうか」
「われらのことが漏れたのか」
山尾の言葉を聞いて、窓から外の様子をうかがうものや不安を口々に言うもので、先程の間での鷹揚さはかき消されていた。
「こちらから手出しをせねば、騒ぎにはなるものではないだろう。落ち着け。冷静になるんだ」
高杉が