【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~#37
8 内訌(3) 晒に巻かれていた聞多も奇跡的な回復をしていた。少しは伝い歩きができるようになってきたのだ。養生を心掛けつつ体力もつけるために、動かなくてはと焦りも多少あったのかもしれない。
家族は聞多を萩の郊外の親戚に隠すことにした。こっそり山口を出た聞多は、妹お厚の婚家である来島の家で落ち着いて、傷の回復に力をかけていた。
下関についた晋作は、奇兵隊を動かそうとしていた。対立する保守派からは解散を命じられていたこともあり、軍監になっていた山縣狂介は、総督の赤根の交渉