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大気汚染を「見える化」することで資産価値の変化・法改正へも繋げたイギリスNPOのどこがすごいのか考えてみた 【PR研究所096】

概要

 SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」にもある通り、大気汚染は持続可能性な未来をつくる上で大きな問題となっています。WHOによると、世界の人口のうち90%が汚染された大気の下で暮らしている計算となるそうです。(AFP通信より)

 ところが大気汚染はなかなか目に見えないため、人びとの意識は低いままです。そこでイギリスNPOのCOPI(Central Office for Public Interest)は、ロンドン市民に大気汚染問題にもっと関心を持ってもらうキャンペーンを行いました。

 それは、ロンドン市内600万カ所で二酸化窒素センサーを設置。Webサイトにて各地の汚染具合を公開しました。また、住所を入力すると自分の家がどれだけ汚染されているかを知ることができます

課題・背景

①SDGsにもある通り、大気汚染の問題解決が求められている

②「見える化」されにくい大気汚染を市民は意識できていない

③大気を資産価値として捉える意識は少ない

ターゲット

ロンドン市民

目的

大気汚染を「見える化」することでもっと多くのロンドン市民に意識をしてもらうため

インサイト

自分の家の資産価値を下げたくない(貸し借りどっちも)
きれいな空気のところがいい

施策

 イギリスNPOのCOPI(Central Office for Public Interest)は、ロンドン市民に大気汚染問題にもっと関心を持ってもらうキャンペーンを行いました。

 それは、ロンドン市内600万カ所で二酸化窒素センサーを設置。Webサイトにて各地の汚染具合を公開しました。また、住所を入力すると自分の家がどれだけ汚染されているかを知ることができます

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(動画よりスクショ)

 さらにこの汚染レベルが資産価値にも影響してくる可能性があることをメディア中心に情報提供していきました。

 「自分の持っている土地や家などの財産が、大気汚染によって価値下がってしまう!」

 たしかにこれはすぐさま考えないといけない問題だと、ロンドンを中心に大きな話題となりました。

結果

ロンドンの不動産業者に対し、大気汚染に関する情報公開を法的に義務付けるまでに至りました(PR edgeより)。法律を変えちゃいました。

PRの事例として注目すべき点

 PRとして注目すべき点は主に2つあります。
 1つ目は、大気汚染により「資産価値が下がる」というとても自分ごと化しやすい切り口を作り出したことです。これは不動産投資をする人からしても、資産家の人からしても、自分の家を持っている人でも今まで気にしなことのなかった新しい評価軸です。価値が下がることは避けたいため自分ごと化されやすくなっています。

 この切り口は資本主義システムの中におけるESG投資にみられる、マネーの動きへテコ入れする方法と近いものを感じます。

 2つ目は、メディア・ロンドン市民・行政・不動産などさまざまなステークホルダーに対してアプローチしていることです。関わる全ての存在に対してアプローチすることで雪だるま式に大きな出来事にしていくことができています。

PR edgeによると更なるアクションが設計されているようです。

自分が住む場所の大気汚染状況を知ったユーザーが、地域の自治体に向けて「電気自動車の充電ポイントを増やしてほしい」「自転車と歩行者が安全に通行できる専用道路を作ってほしい」などのリクエストができるアクションボタンも用意されており、一人ひとりが行動を起こすことを促しています。

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