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【ロージナ茶房】ここではないどこかへ行きたい時に訪れる場所

日常に息苦しくなると誰にも言わずに旅に出る悪いクセがあったけれど、それが叶わなくなってもう1年以上も経ってしまった。
遠くへ行きたい、ここではないどこかへ行きたい、
そんな気持ちが高まった時に訪れる1つの候補はノスタルジックな純喫茶。

1954年創業の「ロージナ茶房」は時が止まったようなレトロな空間でとても居心地がいい。
一橋大学が近くにあり、若々しい学生たちがわいわいとなにかを語っている喧騒が好きだなあと思う。

国分寺駅と立川駅の間の「国立」にも中央線文化の独特な空気感を微かに感じることができるが、
国立の老舗喫茶店「ロージナ茶房」の空気感は随一。

有名人や作家が打ち合わせする場所としてもよく使われていて、
昔は忌野清志郎や坂本龍一が訪れていたことや俳優・いしだ壱成がアルバイトをしていたとも聞く。
作家の山口瞳、滝田ゆうなども有名。

ロージナ茶房は純喫茶でありながら、食事のメニューの豊富さと
1人では食べきれないほどのボリュームに毎度ながら驚いてしまう。
中でも大盛りの激辛ザイカレーはロージナ茶房の看板メニュー。
ザイカレーという名称の由来は、あまりに辛く大盛りのため
「罪深いほどの辛さ」と言われ、「ザイ=罪」で、一橋大学の学生が罰ゲームとして食べさせられていたためにその名が付いたという説を信じていたが、
先日店員さんに伺ったら「創業者が旅先のインドで食べたカレーの名称を聞いた時に返ってきたのが「ザイ」だった」とのこと。

牛肉がたっぷりと煮込まれていてしっかりとした味わいのビーフカレー。
酸味もあり、深い味わいだが、時間差でやってくる辛さに思わず辛い!と呟いてしまう。
でもとてもおいしくて、気づいたら病みつきになっている。
辛いカレーが好きな人にはおすすめしたい!

ロージナという言葉はロシア語で「故郷」や「祖国」の意味を持つ。
ここではないどこかへ行きたい気持ちは、本当は、
どこかへ帰りたい気持ちなのかもしれないなとぼんやり考える。
ナルミのプラスセラムカップに入れられた濃いコーヒーを一口飲むごとに、
ザイカレーによってヒリヒリした口の中が焼けるよう。自分の感覚を取り戻したような気持ちになって我に帰る。

ここではないどこかなんていうものは無く、
日常の忙しさの中でただ本当の自分を見失いかけていたんだなと気づく。

休日の午後4時、長居してしまったロージナ茶房を後にする。
大盛りのザイカレーのおかげで満腹、体は重いが、どこかに行きたい気持ちが癒されて、
心は軽くなっていることに気づいた。

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