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じいちゃんが空へ旅に出たはなし。

※死に関する、センシティブな内容を含みます。

人が『死ぬ』ことを、表現する言葉はどのくらいあるのか。『亡くなる』『あの世に行く』『三途の川を渡る』『星になる』『永遠の眠りにつく』私がぱっと思いつくだけでもいろいろある。

私がこれまで書いた記事の中でも度々じいちゃんが登場するが、じいちゃんの今の状況を『空に旅立った』と表現している。

比喩ではなく、少なくとも私と妹は、じいちゃんは空に旅に出たと信じている。

じいちゃんが旅立つ日までの事はこの記事に書いたので、一応載せておく。

ここからは当日の話。

その日は土曜日で、じいちゃんが倒れる前から、妹と出かける予定を立てていた。じいちゃんがあの世とこの世の境目を行ったり来たりしていた10日間、自分自身も生きている心地がしなかった。それでも、なんとか仕事をし、週末を迎えた。

こんな時に遊びに行くのはどうかとも思うが、そこはうちの母の強い信念があった。「普段通りに、自分の予定をこなしなさい。自分のせいでやりたいことができなかったって知ったら、じいちゃんは悲しいと思うから」

その言葉に従って、私と妹は予定通り出かける事にした。妹の彼氏の誕生日プレゼントを探しに、私のアパートに集合して電車で行こうとしていた。

バタバタとメイクしているところに妹が到着し、あと10分で家を出る。私は歯磨きをしていた。その時、父からの電話。

じいちゃんがもう危ない状態。すぐに来られるか?と。

妹が車で来てくれていた事が幸いした。車に飛び乗り、1時間半ほどかかる実家近くの病院を目指した。

その日は朝から土砂降りで空は暗い。道中もワイパーは大忙しだった。間に合って欲しいと祈るような気持ちで先を急いだ。

山道を抜け、病院のある町まで来た。病院まであと15分。父からのLINEが入る。『今どこ?』

返事を打つ私の手元に光が差した。顔を上げると雲が切れ、太陽と青空が見えた。

その時、妹が言った。

「じいちゃんが行っちゃう!」

私は不思議とその言葉に驚かなかった。「あぁ、そうだね」と思ったから。

病院に着く頃にはまた雨が土砂降りになっていた。傘をさす時間も惜しく、駐車場から走った。

すぐに病室には入れなかった。じいちゃんは父と祖母に見守られながら静かに旅立った後だった。

「電池が切れるみたいだったよ。」父が教えてくれた。じいちゃんが旅立ったのは、青空が見えたちょうどあの時間だった。

その後,病院を出る時も雨は降り続いていた。その日太陽を見たのは、あの瞬間だけだった。じいちゃんは最期の瞬間は見せたくなかったのかな。私たちが悲しむから。でも、旅立つ事は知らせたかったのかな。だからああいう形でさよならを伝えてくれたのかな。私たちのことが大好きな優しいじいちゃんだから。

そんなことがあったので、青空を見上げると、じいちゃんも見ていてくれているような気がする。

今日もきれいな青空だ。

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書く事で気持ちの整理ができます。

最後まで読んでくれたあなた。

ありがとうございました。

春瀬 蒼


最後まで読んでくれたあなた。 ありがとうございました。またいつか🍄