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4年ぶりを書き換えて、雪が舞うのを見た今日のはなし。

バスを降りた時は、ビールでほてった体には、心地の良い寒さだった。
今お茶を入れに行った暖房の風が届かないキッチンは、冷蔵庫の中みたいに冷えている。
どうりで寒いはずだ。
夕方帰ってきた時には雨だったのに、今は街灯に照らされて雪が舞っている。

◇◇◇

「こっちは気合い入ってるんだから!」
誰に向けたなんの宣言か。開店を待つクラフトビール屋の軒先でコウキは意気込む。
まぁ、気持ちはわかる。

わたしを含め、女子2人、男子2人。
ざっくり言うと地元の幼馴染。
こんなに会うのが難しい事態になるとは、そこまで深刻に考えてなかった2020年3月。
最後に集まれたのは、そんな頃だった。
だから、ざっと4年ぶりの再会。
それぞれには会ったり、会わなかったりしていたけれど。
わたしは、
コウキに会うのは4年ぶり。
ユリエは去年の夏ぶり。
ヒロは、1週間ぶり。

わたしたちは29歳になっていた。
「前飲んだ時、25歳だったんだ。」
『1番いい時!!』
ヒロが言うと、みんな笑った。

この4年の間に、コウキとユリエはそれぞれに結婚して、パパとママになった。

「もうお酒飲めるの?」
『うち、ミルクだから。』
そんな会話をユリエとして、自然とそんな話をしてることに少しびっくりというかなんとも言えない気持ちになる。

わたしとヒロは、付き合って10年目に突入した。
ヒロがトイレに立ったタイミングを見計らって、勢いよく2人から聞かれた。
2人、どうなってんの?、と。

わかるよ。見てる周りのほうが、もどかしいと思うよ。でも、私たち何にしてもゆっくりだから。
わたし、結婚がしたいんじゃなくて、この人と一緒にいたいの。

アルコールで程よくぼんやりした頭で、そんなようなことを伝えた。
絶対聞かれるだろうなと思って、みんなで会うことが決まってからずっと考えていた答えだ。

コウキには『えらい!』って言われたけど、正直その『えらい』の意味はピンとこなかった。
えらい、の意味を聞く前に、ヒロはトイレから戻ってきて、
「最近、会う頻度増えたよね、ヒロ」
『そうだね、冬はオレらイベントがたくさんあって忙しいからね。』
という話に流れた。
わたしもヒロも寒い日に産まれた。

次は夏にね!と約束をして、駅で別れた。
去年の9月に買って渡せずにいた出産祝いは、無事にユリエに渡せた。
朝は雲ひとつない冬の晴れた空だったのに、バスの窓から見上げた空は、一面に絵の具を流したようなベタっとした灰色の重そうな雲だった。

◇◇◇


最近は『20代最後の〇〇』という響きにわくわくしている。

学生時代は、『3年生最後の行事』とか、『大学最後の講義』とか、節目の『最後の〇〇』がたくさんあったように思う。

社会人になって、そういうあからさまな『最後の〇〇』は久しく無かった。
あったのかもしれないけど、意識に無かった。

『20代最後の夏。』って、よくない?

◇◇◇

今は炬燵にあたりながら、
中島桃果子著の『蝶番』を読んでいる。

海辺の街の本屋で『魔女と金魚』を見つけた後、町の図書館で『蝶番』を借りた。
『魔女と金魚』があまりにもしっくり心にはまって、他の著書も読みたかった。

でも、『蝶番』を読み切ることはできなかった。
トカイもオトナノセカイも、高校生の私には遠すぎた。と、今になっては思う。

そんな『蝶番』にまた触れてみたくなって、大人になってから暮らしている街の図書館で借りてきた。

1時間前に読み始めた。
一気に3分の1読み終えた。
うん、やっぱりおもしろい。

歳をとる怖さはある。
でも、受け取れるものが変化していくのを感じると、歳を重ねるのも悪くないなと思う。

◇◇◇

またね、があると思えることは、今日が穏やかな日だった証拠。そう思った。

たくさん笑って、4年分の淋しさを書き換えた今日は、大切な日。

◇◇◇

久しくかけていなかったnoteをこうしてまた書くことができた。
言葉が出てきて、うれしい。

最後まで読んでくれたあなた。
ありがとうございました。

春瀬

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最後まで読んでくれたあなた。 ありがとうございました。またいつか🍄