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令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(1215プラス0.7%改定のニュースを更新)

12月9日に介護給付費分科会が開催されました。

審議報告が出され、いよいよ次期介護報酬改定の議論も大詰めといったところです。
今日は、これまで審議された内容の全体像(概要)が示されましたので、これまでの審議内容の方向性についてみていきたいと思います。

2020年12月11日に、介護報酬のプラス改定で調整というニュースが流れました。
現状維持もしくはプラス改定を予測しておりましたが、プラス改定というのは喜ばしいことだと思いますが、デイサービスの入浴介助加算の上位加算創設など(後述)、介護保険制度の維持を念頭に、今回もメリハリのある改定仮名されると推察されます。

令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案)の概要

本日示された審議報告(案)の概要は以下の通りです。
平成30年度(2018年度)改定の概要を参考に掲載しておきます。

全体像

H30全体像

1.感染症や災害への対応力強化

今回の改訂では、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症や自然災害への対応強化を含めた「1.感染症や災害への対応力強化」が新たに追加されました。
福祉サービス第三者評価においても、事業継続計画(BCP)の作成について評価項目で求められる時代となりました。
福祉避難所を兼ねる施設系を抱える法人は、事業継続計画(BCP)の作成を進めていただきたいと思います。

「1.感染症や災害への対応力強化」の中には、「通所介護などの事業所規模別の報酬に関する対応」も盛り込まれており、感染症の影響に伴う利用者減少・利用自粛などへの経営的リスクが一定保証されることが示されました。

1感染症

小規模かつ非正規職員が多い訪問系・通所事業所の倒産が増加しており、社会インフラとして倒産ケースを食い止める効果を期待したいところです(私が関わらせていただいているお客様については、コロナ前の水準にほぼ戻ってきている状況です)。

2.地域包括ケアシステムの推進

前回改定から引き続き、住み慣れた地域において、利用者の尊厳を保持しつつ、必要なサービスが切れ目なく提供されるよう取り組みを推進することが示されています。

認知症ケアに関する加算の創設や看取り期に関わるACP(アドバンスド・ケア・プランニング)の導入、看取り介護加算の新たな評価、介護医療院の円滑な移行、個室ユニット型施設の1ユニット10名から15名への配置基準の緩和(新規開設施設に限る)などが取り上げられています。

2地域包括ケア

認知症ケアや看取り介護、医療と介護の連携強化、在宅サービス事業所同士の連携といった事業所の機能分化と専門性を高めていくことが地域包括ケアを推進していく上で重要ということが改めて示されました(関係する加算取得も視野に入れた対応を検討してください)。

3.自立支援・重度化防止の取り組みの推進

ここでは、科学的根拠に基づいたサービスの質の評価やデータ活用をしたサービス提供を評価する視点が強化されました。

名称未設定

リハビリ・機能訓練や口腔、栄養に関する加算算定を含む取り組みによる成果をより評価する方向性が示されています。
特に、通所介護・通リハにおいて、個別の入浴計画に基づく入浴介助を新たに評価する(=上位の入浴加算の創設)が示されています。
現行の加算が実質引き下げられる見通しです(現行30単位、上位加算50単位では実質マイナス改定)。
よって、上位加算に該当する利用者を選定し、加算算定に向けた準備をされたい(実際の加算単価と手間のバランスは要検討)。

また、CHASEや VISITによるデータ蓄積を進め、効果的なリハビリやケアの確立を進めていくことを推進することが示されています。
これまで経験や勘に頼っていたケアから脱却し、これらへのデータ提出とフィードバックの活用により、PDCAサイクルに基づいたケアの質の向上が求められています。
これからの介護職は利用者のバイタルや食事摂取量、睡眠状況といったデータから健康状況を把握し、体調変化を予測してケアにあたるスキルが必須になるでしょう。
福祉は、医療のように疾病ごとに主となる治療方法が確立されていないので、画一的なケアにはなりにくいですが、こうしたデータベースを構築し、AIがケアプランのたたき台を自動で作成し、それをベースに個別化していくなんていう時代もそう遠くないでしょうね。

4.介護人材の確保・介護現場の革新

平成30年度改定では「多様な人材確保と生産性向上」だった表記が、今回の改定の概要では「介護人材の確保・介護現場の革新」と現場業務のイノベーションが求められるような表現に改められました。

4介護人材

特に、処遇改善加算・特定処遇改善加算に関わる職場環境等要件の見直し、特定処遇改善加算における配分割合の緩和(「2倍以上とすること」→「より高くすること」に見直す)とより柔軟な処遇改善策が施設・事業所で可能となります。
限られた人件費原資を公平に再分配するためには人事考課制度や目標管理制度といった業務成果やプロセス評価と処遇改善の連動性をより強化する法人が増加すると推察されます(職員の業務に向き合う考え方や姿勢がさらに問われてくることでしょう)。

また、サービス提供体制強化加算においては、介護福祉士の割合や勤続年数の長い介護福祉士の割合が高い事業所を新たな区分で評価することが示されました。
現場では介護福祉士を持っている職員が多くなればなるほど、資格手当だけで人件費を圧迫しかねないので、サービス提供体制強化加算(特養では日常生活継続支援加算)を財源に有資格者を評価するインセンティブを検討していただきたい。

さらに、テクノロジーを活用した人員配置・運営基準の緩和を通じた業務効率化業務負担軽減の方向性が示されています。
特養においては、夜勤職員配置加算の見守り機器の導入割合を10%に緩和し、100%導入などの条件を満たせば、夜勤配置を0.9人→0.6人に緩和した新たな区分の創設が示されています。
前回改定では0.1人分しか評価されませんでしたが、今回はかなり踏み込んできています。

北九州市内の特養で行われた国プロでも、介護・看護配置基準3:1に対して、2.87:1の人員配置で現場を回すことが出来るという報告がなされています。
介護事業経営実態調査において、実態として介護・看護配置基準2:1の施設が多い中、2.87:1でオペレーションが回せるのかどうか、期待と不安を感じてしまいます(もう少し情報収集したいと思います)。

例:100名定員の特養において、
2:1の場合-----介護・看護職員 50名
2.87:1の場合--介護・看護職員 35名(34.8名)
15名少ない状況でオペレーションが可能か?

5.制度の安定性・持続可能性の確保

最後は、介護保険精度の安定性・持続可能性を確保するために、評価の適正化や重点か、簡素化が図られます。

5制度の安定性

6.その他の事項

リスクマネジメントの推進に関わる事故報告書の作成・周知はなされていると思いますが、施設系サービスでは、安全対策担当者を定めることが義務付けられます(減算対象となるようですので、体制構築を進めてください)。

また、物価上昇を踏まえた食費の基準費用額の見直しも示されました(消費増税以外でやっと値上げが実現されます)。

基本報酬はどうなるか

次期介護報酬改定の審議報告(案)が示され、ほぼほぼこの内容で進むものと思われます。
今のうちから対応できそうなものは、組織内で検討し、4月改定に向けて準備していただきたいと思います。

基本報酬を上げる方向性で審議に入ったようですが、新型コロナへの対応や介護人材不足など、介護業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。
介護・福祉のコロナ交付金を増額する新たな経済対策が決定されましたが、この交付金による環境整備、恒常的な経営の安定化を図るための"プラス改定"の英断を期待したいですね(ただし、財政的には厳しい状況ですので、ない袖は振れません)。

withコロナ時代を支えるエッセンシャルワーカーとして、適正な基本報酬での評価を期待します。

管理人

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