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ため息俳句13 雪の日

小雪舞うかの古書店で叱られし


 田舎町であったが、古書店が数店舗あった。
 その中でも、積み上げた本が足元まで崩れかかってきそうな、とっ散らかって、埃ぽっくて、古紙のに匂いが充満していた哀し気な店が好きだった。
古本を買うということを覚えたのは、高校2年の頃であったか、学校帰りに立ち寄っては、古雑誌の山を掘り起こすように手に取ってみるのだった。

 雑誌の中には、まさしくエロいものが当然混じっていた。今でも思い出すのが、「風俗奇譚」「裏窓」「100万人のよる」・・・。勿論学生服のガキが堂々と立ち読みできるはずもなく、表紙をちらっと見るぐらいしかできなかったのだが。後年、手に取る機会があって、何冊かは購入したのだが、今はどこかに消えてしまった。

 さて、その古本屋の主人はどう見ても本好きの人物とは見えなかったが、突然、「立ち読みはだめだよ」と声をかけてきたことだあった。たった一度だ。数日後、何もなかったような顔をして、立ち読みをしたのだが、何も言わなかった。後にも先にも、それっきりであった。その日、小雪が散っていたのを覚えている。

 先日、思いがけなくその街を通りすぎると、今はもう跡形もなく、ちょこっとおしゃれなカフェになっていた。