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「古今十七文字徘徊」帖

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古今のふれあった俳句作品についての所感を記録しておくノートのまとめです。作品にふれあうというのは、きわめて個人的なことで、古典として名高い名句とか、コンクールの優秀作品とか、そう…
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2024年6月の記事一覧

#9 華麗な墓原女陰あらわに村眠り 兜太

#9 華麗な墓原女陰あらわに村眠り 兜太

「金子兜太句集」の中で、よく知られた作品である。

華麗な墓原女陰あらわに村眠り 金子兜太

 別に難解な句だとは思わない。
 それなら、句意を書けと云われると、困ってしまう。
 
 死者のためには「華麗な墓原」がある村のことである。
 疲れ果てて貧弱に荒くれた男達を、女達は身体を開いて抱え込む。
 唾と汗と体液が滴りまぐわい、果てれば、二人で一枚の煎餅布団にくるまって眠る。
 眠る、眠る村はつか

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                                                            #8 死なうかと囁かれしは蛍の夜 真砂女

#8 死なうかと囁かれしは蛍の夜 真砂女

 六月一日のことであるからもう二週間程前のことになるが、市内某地区の「蛍まつり」にでかけた。その地区を流れる用水路で蛍が飛ぶのを見ることができるのだ。祭りはたった一晩のイベントであるが、蛍はその前後の十日間ほどは見ることができる。しかし、そこはお祭りゆえに、気分が浮き立つものだ。
 「蛍まつり」であるから真っ昼間から始まるはずはなく、午後6時よりということで、それでも二〇分前には到着せんと車を走ら

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