生まれ変わるというのは祝福なのかそれとも別の悪夢か 💗「財閥家の末息子」
《乱れ撃ちシネnote vol.204》
鑑賞日:2024年6月13日 Amazon Prime Video
【Introduction】
先日観た『女王陛下のお気に入り』と『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモス監督が気になるな〜。
ということで、 ランティモス監督の過去作を観た。
24.06.03(04) -☆- 「籠の中の乙女」 ヨルゴス・ランティモス監督 2010年 Amazon Prime Video
まったく物語に入り込めず30分で途中下車したのでもう一本ランティモス監督作品を。
24.06.03(05) -☆☆- 「ロブスター」 ヨルゴス・ランティモス監督 2016年 Amazon Prime Video
これもまた全く意味不明な作品。
この作品はなんなのよ?
ランティモス監督作品をきびしく浴びたのでここで箸休め。
24.06.04(07) -☆☆- 『引っ越し大名』 犬童一心監督 2019年 Amazon Prime Video
生涯に7回もの国替えをさせられて“引っ越し大名”とあだ名された実在の大名・松平直矩(なおのり)をモチーフにした土橋章宏原作の小説『引っ越し大名三千里』の映画化作品。
松平直矩の引っ越し歴
慶安2年(1649年)山形→新潟
寛文7年(1667年)→姫路
天和2年(1682年)→大分
貞享3年(1686年)→山形
元禄5年(1692年)→福島
天和2年(1682年)→大分
度重なる引っ越しにより直矩は多大な借財を負い「引っ越し大名」のあだ名をつけられた。
松平直矩を演じた星野源がひょうひょうとして良かったし、
退屈はしなかったけれど面白みの少ない作品だった。
犬童一心監督の名前を初めて知ったのはこの作品だ。
『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)
足に障害のあるジョゼはお祖母ちゃんと生活保護を受けながら暮らしている。「お前は壊れ者だから人前に出てはいけない」と言われて人気のない明け方だけ婆ちゃんの押す車椅子に乗せられて散歩するジョゼ。
偶然ジョゼと出会った純真な大学生とジョゼとの純愛ラブ・ストーリーの傑作。
障害者で人と全く接することを許されないジョゼはお婆ちゃんとの散歩の時にゴミ捨て場に廃棄された本や雑誌を見つけると手に入れて一人でむさぼり読んでいるためのとても博識な女性なのだ。
この作品で初めて池脇千鶴を知り、
彼女の演技に驚いてデビュー作『大阪物語』を観た。
池脇は沢田研二・田中裕子演ずる夫婦漫才師の娘・霜月若菜役を演じ、
第54回毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞、 第73回キネマ旬報新人女優賞などを受賞している。
ちなみに、偶然見つけた池脇千鶴が出演するドラマで面白かったのが『その女、ジルバ』。
大手百貨店をリストラされた40歳の女性が平均年齢70歳の高齢ホステス・バーで働くことにより生きる本当の喜びを味わう物語。
第23回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した有間しのぶの漫画の「テレビドラマ化。
第58回ギャラクシー賞テレビ部門入賞(2020年度)を受賞し、
池脇千鶴は第47回放送文化基金賞 番組部門 演技賞(2020年度) 受賞している。
相変わらず池脇千鶴はうまい!
その他にも犬童監督作品の『メゾン・ド・ヒミコ』(2005年)は何度も観ているほどお気に入りだ。
一斉を風靡した銀座のオカマバーのママが老後行き場のなくなった仲間のオカマちゃん(失礼)たちを収容する養老院を経営するために突然店をたたんだ。
それから何年後のある日。
給料が安すぎるので風俗のアルバイトでもしようかと悩んでいた女性事務員にこの養老院で働きませんかとイケメンの若い男から声がかかる。
その養老院の経営者のママはお金のために彼女と母親を捨ててオカマになった憎い父親だった。
老いたママが舞踏家田中泯、
ママの若き恋人で懸命にママをサポートするオダギリジョー、
父親を憎みつつも養老院で働き始めた事務員が柴咲コウ。
存在感のある役者が揃うと映画の深みが増す。
LGBTQの愛と哀しみが溢れたとても素敵な作品だった。
犬童監督はドキュメンタリーも手掛けている。
監督が敬愛する大林宣彦監督とプロデューサーの恭子夫人の人生を描いた作品。
『ノンフィクション W 大林宣彦&恭子の成城物語~夫婦で歩んだ60年の映画作り~』(2019)
生前、黒澤明は「日本映画を頼んだよ」と二人の監督へ遺言を残している。
その一人が大林宣彦監督。
初めて観た大林監督作品は新宿蠍座で観た16mmの『EMOTION 伝説の午後いつか見たドラキュラ』(1967)。
“ロジェ・バディムと彼の『血とバラ』に捧げる その青春と青春の終わりの故に”というタイトルバックを目にしただけで胸が熱くなった。
以来、
大林監督の劇場公開デビュー作『HOUSE ハウス』(1977)から遺作となった『海辺の映画館~キネマの玉手箱』(2020)まで全作品を観ている。
ちなみに黒澤監督が日本映画の未来を託したもう一人の監督は北野武。
北野作品もデビュー作『その男、凶暴につき』(1989)にビックリして以来『首』(2023)に至る全作品を観ている。
デビュー当時からこの二人の監督が大好きなので黒澤監督の言葉は嬉しかった。
犬童監督のドキュメンタリーと言えばこの作品も凄かった。
『名付けようのない踊り』(2022)
『メゾン・ド・ヒミコ』に出演している60年代から独自の境地を開いた世界的な舞踏家田中泯を捉えたドキュメンタリー。
毎回面白いドキュメンタリーを発表する原一男監督作品以外にこんなに面白いドキュメンタリーがあるのかとトキメキの120分を体験した。
つまりはこれほどの作品を残している犬童監督の作品にしては『引っ越し大名』はちょっとね~な作品だったということだ。
ここらでまたまた韓国ドラマを。
24.06.13(08) -☆☆☆☆☆- 「財閥家の末息子」全16話 チョン・デユン、キム・サンホ監督 2022年韓国 Amazon Prime Video
この作品はクリーンヒットだ。
韓国ドラマの醍醐味を満喫してお腹いっぱいになった。
良くできたシナリオ、個性的なキャラクターたちから湧き上がる心地よいアンサンブル、切れ味の良い演出。
見ごたえのある転生・復讐劇の傑作だ。
第15話の母親のセリフ(20分50秒あたり)が心に染みた。
おかあさんは毎日祈ってる。
真面目で礼儀正しい息子に辛い時にそっと手を差し伸べてくれて、
内面をさらけ出しても恥ずかしいと思わない人と出会って生きていけるようにと。
【物語の概要】
韓国を代表する財閥スニャングループの未来資産管理チームで働くユ・ヒョンウ(ソン・ジュンギ)は、
副会長チン・ソンジュン(キム・ナムヒ)に裏金の回収を依頼された。
目的を果たすためにトルコに渡ったヒョンウは裏金の存在を知ってしまったため組織に銃で撃たれてしまう。
っが、
彼が目を覚ますとそこはソウルオリンピックを翌年に控え民主化へと突き進む激動の1987年のソウル。
ヒョンウはスニャングループ創業者チン・ヤンチョル会長(イ・ソンミン)の孫チン・ドジュンの体に乗り移って(転生して)いた。
二度目の人生を授かった彼は自分を殺した犯人探しを始め財閥一家に復讐を誓う。復讐とはスニャングループの経営権を一族から奪うこと。
財閥一族から経営権を奪うためのドジュンの長い闘いが始まった。
【Trivia & Topics】
✥コントラストの鮮やかな宿敵どうし。
主人公のユン・ヒョンウを演じたのは『ヴィンチェンツォ』で大評判を呼んだソン・ジュンギ。
貧しい家柄に生まれて苦労してきたユン・ヒョンウと財閥スニャングループの末孫チン・ドジュンの二役。
ヒョンウの記憶を持ちながらドジュンとして生きるという複雑な人生を終始クールな表情でみごとに演じている。
片やスニャングループの会長チン・ヤンチョル。
圧倒的な存在感で冷徹なキャラクターを演じたのがイ・ソンミン。
ドラマ「ミセン-未生-」で未熟な新米社員の上司を演じる庶民的で泥臭い人情家のイメージが強かったので、
最初に財閥の会長役で登場したときはイ・ソンミンだとは思えなかった。
「ミセン-未生-」の気のいい上司のイメージの印象が強かったので当初はこのキャラクターに馴染めなかったが、
独特な話し方、皮肉屋ぶり、肉親に対しても容赦のなく叩く口ぶりになれてくると一代でグループを築き上げた財閥の会長のイメージがしっくりするのだから力のある役者はすごい。
静かに笑みを浮かべる静的なソン・ジュンギと時に激昂を抑えきれない動的なイ・ソンミン。対照的な性格の二人の丁々発止のつばぜり合いがスリリングでたまらない。
【鑑賞ガイド】
😁😁😁😁😁
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😁😁😁😁😁:見事な作品。
😄😄😄😄:お勧めです。
😀😀😀:楽しめます。
😔😔:苦手です。
🥵:途中下車。
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【巷のうわさ】
Filmarks:☆☆☆☆★(4.2)
u-next :☆☆☆☆
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