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年次句集 二〇二三年の水鳥

ハンモックに抱擁されて初夏の酒

熱帯夜苦し紛れの嘘ばかり

雨喜あまよろこび人情らしき嘘ばかり

瓶ビール入道雲に盛り上げる

夏陽射なつひざし遊ぶ魚を光らせて

端居はしいしてはや麦酒むぎざけの栓を抜く

枯蚯蚓かれみみず雨が降っても戻らない

極暑ごくしょにて形保たぬチョコレイト

部屋仕事右腕だけが灼けている

荒れ狂うために膨らめ夏の雲

朝曇あさぐもり犬を興奮させてみる

あるじのない目高鉢めだかばちにて鳥遊ぶ

打水うちみずをしたところとて部活生ぶかつせい

逃げ水を追いかけもせず幾年いくとし

脅かしたなら悪かったさぎの声

空腹を作り出そうと海で泳ぐ

浜宿の朝隣室りんしつで泣く子供

名残惜しそうにまだ成る蔓茘枝つるれいし

長雨ながあめにそれらしい嘘書き綴る

中秋の翌日だって丸い月

枯向日葵かれひまわりお前は何も悪くない

夜寒酒よさむざけリッター単位の尿いばり

くれぐれも依存するなと澄む新酒

寝食を忘れないけど読書の秋

秋の夜三合くらい飲んだろかい

思い出を語り合うのか虫の声

秋空を満喫するかとびの声

その靴が気に入ったのか赤蜻蛉あかとんぼ

秋陽射し頭皮にばかり降り注ぐ

夕空にさっとかすれたすすき

ぼこら芒ばかりに拝まれて

休日も釣瓶落としに幕切れる

小便が夢妨げる夜寒哉

存分に恨みを晴らせ茸狩り

師走酒ひとの不幸で盛り上がる


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