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Delusion rocking on vo287



シンザ高松についた私はまず被害者の女性に連絡をつけ、喫茶店で待ち合わせをいたしました。


以下その時の記録ー


八袋「原邦夫から被害を被ったと聞いています。率直にその話を可能な限り聞かせてもらえたら、と思います」


SAさん「はい、あれは◯月×日のことでした。私は演者としてライヴハウスに行っており、出演が終わったあと控え室で荷物をまとめていた時のことです。誰かが控え室に入ってきました。ヌッと大男が現れ、神妙な面持ちのまま私の方を見ていました。なんだろうと思っていたら、彼は申し訳なさそうに頭を下げ、一直線にこちらに近づいてきます。私は身構えました、が、ドラムスティックを忘れたので貸して欲しい、と彼は頼んできました。なんだ、そんなことかと私はホッと胸を撫で下ろし、スティックを渡しました。そうすると、、、」


八「、、、辛いなら、無理をなさらなくても大丈夫です」


Sさんは深呼吸して、大丈夫です。と言い、話を続けました。


S「彼はドラムスティックを持って控え室から出る時、急に立ち止まり何かうわ言のようにブツブツと独り言を喋り始め、頭を振ったり自分の頭を叩き出したりしていました。私は怖くなり、早く控え室から出ようと思いましたが、入り口で彼に止められ、突然土下座をされました」



本当に申し訳ないのだが、挿れさせてくれないか



S「私はなんのことかわかりませんでしたが、すぐにハッとし「犯される」そう思いました。しかしその怯えた私を察して彼はこう言いました」



あ、違うんだ、申し訳ない。私のペニスじゃないんだ。このドラムスティックだ。しかもチップのところだけでいいし、アヌスで構わない。お金も払う。どうか、どうか!



S「彼は床に頭を擦り付け、迫真の勢いでそう頼んできたのです、、、」


八「なるほど、それはとても恐ろしかったでしょうね、、、。それでSAさんはどうされたのですか、、、?」


S「はい、結局私は断り切れず、彼を受け入れました、、、」


八「そうですか、、、。それはお辛かったでしょう。心中お察し致します。その、失礼かもしれませんが、行為中彼はどうしていたのですか、、?」


S「はい、彼は私が挿入するのを身動ぎひとつせず、正座をして血眼で凝視していました。私は下着をずらし、白く冷たいプラスチックの先端を、ゆっくりと挿れていきました。少し声が出たように思いますが、彼は微動だにせず、見続けていました。、、、それで私は彼にそんなに見られていること、誰がくるかわからない緊張感で一種の恍惚感を味わい、、その、なんというか、、、、、」


八「、、、なるほど。現実離れした空間で、非日常的興奮を覚えたのですね。それからどうなりましたか?」


S「はい、私は少しして我に返り、慌ててドラムスティックを抜き取り、彼に投げつけました」



その後、原邦夫はありがとう、ありがとうと何度も繰り返しながら封筒をSさんに渡したそうです。


私はSさんにお礼を伝え、謝礼を渡したあと、煙草を吸いつけながら思案に耽りました。


昔、何かの書物で、男は戦場に出る前、非常に猛ると読んだことがあります。原邦夫はそういったテンションになるのかもしれませんね。病気だ。


そうして一区切りついた私は煙草を揉み消し、その足でライヴハウスに前乗りすることに決めました。



さて、地図に表示してある場所に来たものの、目的地が一向に見当たりません。私は弱ったな、と思いながらもかなりの時間うろうろしていました。そうこうしながら、私は原邦夫に渡された紙を思い出しました。こうなることを彼は予想していたのでしょう。


財布にしまっておいた紙を取り出し、p2と言われる人物に連絡を取ってみました。p2は3コール以内に電話に出てくれ、そして道に迷っている旨を伝えると、すぐにそちらに向かうと言ってくれました。


それから10分も待たずにp2はやってきました。始めp2が近づいてきたとき私は目を背けました。ボロボロに破けた小汚いズボン。ほつれて穴だらけの上着。そこからちらちらでている刺青。刈り上げた頭なのに編み込んだ後ろ髪。その奇妙な佇まいに顔を伏せるのは当然に思えます。そんな反社か世捨人とは関わりたくありませんから。


だからその人に話しかけられ、私はとても驚きました。まさかそれがp2とは、と。


しかし話をしてみると、意外にも普通の対応に私は拍子抜けいたしました。


p2は、ここのライヴハウスは少し特殊な入口になっている、と言い私を案内してくれます。


まず精肉屋に入り、p2が店員に向かって何か話しかけました。するとp2は店奥の肉を保管する冷凍庫に向かうと言います。バックヤードは恐ろしく広く、段ボールが山程あり、1人だと迷子になるだろうと思いました。p2についてしばらく歩いていると、ようやくその冷凍庫の場所に着きました。そしてその扉を開くと、地下に続く階段がありました。長く深い階段。冷気が漂ってき、私の首筋はヒヤリとしました。


さて、そこから先もp2はよく知る場所のようにどんどんと先へ先へと進みます。p2の三つ編みした後ろ髪が振り子時計のようにゆらゆらと揺れておりました。


しばらく歩いたのち大きな扉があり、p2が立ち止まります。この先が目的地だ、と言ってp2は用は済んだとばかりに踵を返しました。


私は慌ててp2を引き止め、謝礼を渡そうとしたのですが、やんわりと断られ、そのまま帰っていってしまいました。


お礼もいい損ねてしまったな、と思いましたが、私は気を取り直し、ライヴハウス「ドゥバッツ」に潜入したのです。


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