試験にはたぶん出ない古語クイズ(2022/06/24)

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クイズの答えは「②かひ」でした。
古い時代に「貝(かい)」を使っていたのが語源だとされます。


正倉院所蔵「貝匙(第1号)」

上の画像は正倉院の「貝匙」です。正倉院には他に金属製の匙も収められています。


【 原文 】
ものの後ろ、障子(さうじ)など隔てて聞くに、御膳(おもの)参(まゐ)るほどにや、箸(はし)、匙(かひ)など取りまぜて鳴りたる、をかし。

【 現代語訳 】
物陰に隠れ、衝立(ついたて)を隔てて耳を澄ますと、食事をしているのか、箸(はし)や匙(さじ)などの音が入り交じって聞こえてくるのは面白い。

(『枕草子』、清少納言)

わたしたちが和食を食べる際は箸が原則で、匙を使うのは限られた料理だけですが、平安前後の文学作品には、貴族が匙を使って汁物を食べるシーンがしばしば登場します。一方、「匙」を「さじ」と読むのは、漢字の「茶匙」から来ていて、本来はお茶をすくう「茶杓(ちゃしゃく)」を意味していました。
長い歴史の中で、食事の作法と匙の利用目的が変化していったようですね。

引用した文章を少し補足しておくと、現代語の「参る」は謙譲語ですが、古語では尊敬語として使われるケースがあり、今回の文章では「召し上がる」(「食べる/飲む/する」の尊敬語)という意味になります。(尊敬語の「参る」は、ちょっと難しめのテストに出ます)


また、お椀にご飯を盛り付ける「しゃもじ」は「飯匙(いひがひ)」と言いました。ご飯用の大きなスプーンというわけです。

【 原文 】
はじめこそ心にくくも作りけれ、今はうちとけて、てづから飯匙(いひがひ)取りて、笥子(けこ)のうつはものに盛りけるを見て、心うがりて行かずなりにけり。

【 現代語訳 】
初めのうちは奥ゆかしく振る舞っていたが、しばらくするとすっかり打ち解け、自分でしゃもじを手に取って器に盛り付けるようになったため、男は嫌気がさして訪れなくなった。

(『伊勢物語』)

ちなみに、「しゃもじ」を漢字で書くと「杓文字」で、これは「杓子(しゃくし)」の女房言葉(昔の女性たちが使った隠語)から来ています。わざわざ言い換えるようになった理由は定かではありませんが、先の『伊勢物語』のように「自分で料理をよそうのは卑しく恥ずかしい」という風潮から、ごまかすようになったのではないでしょうか。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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