現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その51)
皇后宮《こうごうのみや》は特にこれといった病ではなかったため、少しずつ快方に向かった。安心した二宮は慌てて音羽山へと向かったが、姫君は既に立ち去った後だった。
いら立ち、泣きながら恨み言を並べると、尼君は素知らぬ振りで答えた。
「大変申し訳ございません。このような年にもなって、身分の低いあの子のことで嘘《うそ》つきだと思われるのは不本意なのですが、かつてこの山里の主《あるじ》だった者から密《ひそ》かに託された娘で、つれづれの慰めのために探し出して引き取り、十年ほど一緒に暮