現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その58)

 思慮深い皇后宮《こうごうのみや》の心には、人知れぬ関白との関係が恥ずかしくも気が引けて、これまで姫君の素性が世人に知られないように対処してきた。しかし、姫君が次第に成長するにつれて、厄介な事情の身の上が言いようもない問題を引き起こすかもしれないと思うとつらく、絶えない悩みに苦しんでいた。
(続く)

 再び皇后にスポットが向けられます。
 姫君の居場所を移すことで近親相姦の危機は回避できましたが、姫君の未来を考えると今のままでいるわけにもいかず、決断を迫られています。

 ここまで読んでいただいた方はお気づきかもしれませんが、「我身にたどる姫君」は姫君が表向きの主人公とはいうものの群像劇スタイルの作品で、特にこの第一巻は姫君の母親である皇后が実質的な主役になります。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


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