FMシアター←いいねコレ。『桜は、散らない!』感想

FMシアター『桜は、散らない!』


ラジオドラマって普段あまり聴かない。今回は役者の玉置玲央さんが出演されているということで拝聴。
玉置さんは身体能力に優れた役者さんなので、私の中のイメージは板の上でひたすら動き回っているところで留まっていた。最近は映画やNHKドラマ出演を次々と果たしているご様子。そのため、諸々の活動に注目しがちであったところこのFMシアターに出会い「是非とも声の演技も聴いてみたい」と思った次第だ。


お話の舞台は、とある高校の演劇部。ドラマ自体は50分というボリュームだが「そんなに尺あったの!?」と思うくらいあっという間でテンポが良い。
いわゆる"戦後の台本検閲による表現規制"を現代の高校生のスケールに置き換えてテーマとしており、ストーリーはそこから巻き起こる葛藤と戦いに終始一貫している。


最後のシーンは是非見届けて欲しいので詳しく書かないが、高校生のがむしゃらさと強い意志を持って表現に立ち向かっていく様は、まさに芸術を愛する者の戦いである。


一方で、芸術について声がでかくなりがちな演劇人への揶揄のような表現もあり、ちょっと考えてしまう場面もあった。
もちろん、私も演劇は好きなので、どんどんその手の活動が広まる手段が出てくればよいと思っているクチだが、ともすれば「演劇という芸術は一番!」みたいに頭でっかちだと思われてしまいがちな部分のアンチテーゼのようにもとれた。
(作家さんがどのような意図を持っていたかは分からないし、尺から見てもここを掘り下げることは出来ないだろうから、別にこの脚本でそこを書いてくれとは思っていない。)

とはいえ、高校生が理不尽や表現規制に真っ向から反論することは必要があればしなければならないことでもある。コロナ禍でも誰も味方してくれず、業界の人間だけでなんとかしていかなければならなかったプロたちの苦しさを、しっかり汲み取ってくれた脚本だったと思う。


ついでのように書いてしまって申し訳ないが、主人公を演じるのは今をときめくミュージカル俳優・木下晴香さんだ。
ツッコミ役かと思われた主人公がいつの間にかガンガンいこうぜ系のキャラに転じているのが面白い。玉置さんとのボケとツッコミのような掛け合いも秀逸だ。


聞き逃し配信は6/17㈯ 22:50までということである。
普段ラジオドラマを聴いていない私でもあっという間だったので、気になる方は是非。

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