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ホラー映画の舐めプは許さない―『コンジアム』に油断した我々は

※観た人向けへの感想です。

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最後まで観れなかった人もいたという曰くつきの『コンジアム』。
POVの中でも恐怖演出には定評があり、ホラーマニアの間では必見の作品と言われている。


この映画の好きなところは、そのえげつない突き落としっぷりである。

序盤は、ホラー好きからしてみれば、恐怖度は割と余裕だ。
まあそもそも心霊チャンネルのディレクターが何が起きても淡々と指示出しをしている時点でちょっときな臭さは感じられるから、人によっては「インフルエンサー達が怖がっているなあ」くらいのユルさで観てしまう。

しかし、これは完全に映画側が仕掛けた罠である。

ホラー通の人間が余裕をかましているところに容赦なく足をかけにくるのが『コンジアム』。

とにかく後半戦の追い込みが尋常ではないのだ。


途中から心霊チャンネルの"ヤラセではない怪異"が明白になっていくことで不穏さが加速していくのだが、この辺りはまだいい。探索メンバーが分裂してからが本物の勝負。

あれよあれよという間に「夢なら醒めてくれよ」と叫びたくなる最悪のエンカウントが続き、その地獄っぷりは観ているこっちも「逃げ切ってくれ!」から「あ、無理だな」という諦めが生まれてくるほど。

正直、インフルエンサー達は悪人でもないのでただ哀れに巻き込まれただけの人達なのだが、一応ゲスムーブ代表のディレクターへの制裁はとっておきの形でラストシーンにセット。

とはいえ、誰でも巻き込む時点で不条理ホラーであることには変わりない…。


細かい点だけど、ラストの配信画面のフレームにいる髪の長い幽霊2人がしれっと立ち上がる演出はかなり良かった。
地獄とは無縁の視聴者たちのコメントが続くなかで、急激に異世界側へ転換するかのような表現は面白い。


『コンジアム』はあまりストーリー性は重視されず、舞台になっている精神病院の悲劇についても謎は解き明かされないまま終わる。"よく分からないけどとにかくエグい事件があった"というだけ。
しかし、そこがさらに人間の巧みな想像力を引き出させ、嫌な想像を観客に与えてくるところがえげつない。

「とにかく怖いもんが観たい!」くらい飢えている人に与えるべき作品だ。

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