おすすめ小説紹介「メインテーマは殺人」

いままでもアガサクリスティやエラリークイーンのおすすめを紹介してきましたが今回は一冊に絞って紹介します。タイトルは「メインテーマは殺人」。著者はアンソニーホロヴィッツです。

著者

アンソニーホロヴィッツは元々児童小説を書いていた人ですが「名探偵ポワロ」、「刑事フォイル」(この二つは見たことありますがおすすめです。)「バーナビー警視」といったテレビドラムの脚本も手がけています。さらにコナンドイル財団やイアンフレミング財団公認のシャーロックホームズや007の小説も書いています。「カササギ殺人事件」でオリジナルの推理小説の執筆も開始し本作が1作目のホーソーンものは4巻まで出ています(日本版は3巻まで)

あらすじ

 脚本家で小説家でもある私(アンソニーホロヴィッツ)はドラマの捜査シーンの監修を行う元刑事のホーソーンから自分が捜査に協力している事件を本にしないかと持ちかけられます。なぜならホーソーンはとある事情で警察を辞めたもののその捜査能力を買われてアドバイザーとして難事件の捜査を行っています。しかしそれと監修だけでは懐が寒いからというものでした。粗野で自分勝手なホーソーンにアンソニーは不快感を示すものの次第にその捜査力の高さに惹かれると同時に事件の真相を知りたいという探究心から時に反発しつつも協力していくことになります。
 その事件とはある資産家の老人が自分の葬儀の予約をしたその日に殺害されたというもの。どこにでもいる人当たりのよく大きなトラブルもない人物に思えましたが過去を洗うとある事実が判明します。さらに捜査を進めると様々なことがわかっていきます。

おすすめポイント1 「設定が面白くリアリティがある」

 なぜ探偵になり、なぜ民間人なのに警察の捜査に協力しているのか。探偵ものも大切な設定の一つだと思います。
 この本ではそこの設定が自然で現代的かつ2人の微妙な距離感に説得力を持たせています。また作者本人が相棒という設定も面白いです。しかもそれが単なる設定で終わらずリアリティとユーモアを生み出しているのがよいです。(ただ自分についてのパートが人によっては冗長に感じるかも)ホーソーンも嫌悪感を感じるほどの嫌なやつとして描かれてはいますが、捜査に対する姿勢は敬意を持てます。さらにごくまれに見せる不器用な優しさやプラモデルが上手いといった一面に不思議と好感を抱いていきます。またあまり過去を話したがず経歴や私生活は不明です。そこら辺はシリーズを通して徐々に明らかになっていくようなのでこれからも目が離せません。

おすすめポイント2「正統派の謎解き」

この本の謎解きを一言で言うと「ホームズの推理とクリスティの人間ドラマ」です。近年の推理小説ではあまり見られない本格派の謎解きです。権力の圧力も現実の社会問題も激しい暴力も重たすぎる人間ドラマもない。謎解きに集中できるシナリオです。(実際あまり推理の当たらない僕が犯人は外しましたが犯行動機は一部当てることには成功しました)またミスリードがいっぱい用意してあります。途中で「あっこれミスリードだな」と察しがつくのですがそれを思わぬ方向で締めてくるのでミスリードと知りつつも真剣に追ってしまうのが躍らされているようで面白くなってきます。さらに結末も結構なんだと思うもの。こう書くとたいしたことないと誤解されそうですが個人的には全く分からないけど先入観、思い込みにとらわれず細かい手がかり、引っかかりを意識して読めばさほど難しくなく、悔し紛れになんだよ!と思ってしまう結末が1番面白く、再読の楽しみもあって1番いいと思っています。(再読しても手がかりを落とすまでがセットです笑)そんな結末が待っているのがこの作品です。

読みやすい文章ですらすら読めるなど他にもおすすめポイントはたくさんあります。いままでたくさんの小説を読み面白さに感動したものは多くありますがここまで面白くて人に薦めたいと思ったものは滅多にありません。百聞は一読にしかず。ぜひ読んでみてください。

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