出版界の行き詰まり感は、「既存の出版流通」の制度疲労だと思う

出版に蔓延してる行き詰まり感、
最近ではもう、言い尽くされていて、食傷気味でさえあります。

でも、「既存の出版流通」の制度疲労に過ぎないと思うのです。

「紙の本」や「書店」は、むしろ、今こそ可能性に満ちている、
最近つくづくそう感じます。

(そのあたりの考察については、2016年に書いたブログ「サードウェーブ・パブリッシング」という希望 を読んでもらえたらと思います。


ここでは、「既存の出版流通」の制度疲労について、
具体的に記していきたいと思います。


■制度疲労の典型例はビジネス書にある

一番わかりやすいのは、ビジネス書です。

スライド12

ビジネス書の読者は、役立つノウハウや情報を、可能な限り効率的に得たい
人がほとんどだと思います。
読書時間そのものが価値である小説などとは違い、
読書に費やした時間に対し、どれだけの実益があるか、が重要な指針です。
(もちろん、ビジネス書の読書時間そのものも楽しいのですが)

したがって、「必要な情報だけを、できる限り早く手に入れて、短時間で読める」ほど価値の高い本と言えます。


しかし、既存の出版流通の仕組みでは、
少なくとも数千部、できれば1万部程度は売れるテーマで、1,000円以上の値段をつけないことには商品として成立しないので、
「ある程度汎用性のある内容・200ページ程度」というパッケージになってしまいます。

当然、ぬるい内容になりがちです。

よって、本は出したいけど出版社を通すと自分の伝えたい内容にならない、と感じている経営者は少なくありません。

それでいて、200ページもの本を作る労力は相当なものです。

ベストセラーになってくれたらまだいいですが、
大半は、著者、編集者、デザイナー、校閲者、など関わる人は皆、大変なわりにあまり稼げない、という状況になりがちです。


また、行間がバンバン空いてる本は、薄っぺらいことが書いてありそうに見えるため、たいていの本はぎっちり文字が詰まっています。

仕事で提出される書類が、もしギッチギチに文字が詰まって書かれていたら、その時点でその人の仕事能力を疑ってしまいますよね。

ビジネスにおける書類では当たり前のことが、ビジネス書では実践されていません。


つまり、既存の出版フォーマットは、ことビジネス書に限っては、完全に破綻しているのです。

本当に出したい情報は出せないのに、著者も編集者も出版社も大変。
その割に、あまり稼げない。
尖った情報でもないし、読者の手に届くのも遅いし、読むのに時間かかるし、
…と、みんながあまり幸せにならない構図になってしまっているのです。

■今後の出版物が向かう二方向

既存出版物は、コモディティ商品化しながら、
中途半端な「過剰包装」に陥っているように思います。

こだわるなら徹底的に豪華に、
こだわらないなら徹底的にライトに、
という両極への動き
が目立ってくると思います。


豪華の方向性としては、「上質な紙を使用して、高度な印刷技術を用いて…」といった従来の豪華装丁本とはまた違うかたちが生まれてくると思います。
(このあたりについては2016年に書いたブログ「サードウェーブ・パブリッシング」という希望 を読んでみてください)


ライトな方向性では、
「手間をかけすぎない」価値が高まっていくと思います。

「大量生産による低価格化」ではありません。「チープ」でもありません。
たとえば、漫画単行本に収録されている、おまけ漫画などのように、「作者があまり力を入れずに描いてるからこその価値」というものがあります。
それはファンにとってはたまらなく魅力的です。

作り込まれた作品よりも、ライブ感、人の手の温度感が直に伝わってきます。

その商品価値がもっと大切にされていく流れが生まれてくるはずです。


ウェブ、テクノロジーのさらなる進化で、
「紙の本」や「書店」は、むしろ、今こそ可能性に満ちている、
改めて、そう感じています。

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