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[SS]テニス部のある日の一コマ[きっと、よくあるはなし]
小説「きっと、よくあるはなし」のサイドストーリーです。
本編は↓こちら
テニス部のある日の一コマ
『ねね、三佐倉。テニス部の先輩で高身長のイケメンって誰?』
晶にそう訊かれた時には「どうでもいい」なんて思ったが、
ちょっと暇つぶし、というか面白半分にいっちょ訊いてみるかと部活中ではあるが先輩に問いかけた。
「名木原先輩訊いていいです?」
柔軟体操のペアになっていた2年生の名木原仁は長い手脚を伸ばしながら快く了承した。
この先輩はいつも穏やかで先輩風なんか吹かすこともなく、部活中ストレスなく話せる先輩の1人だ。
「うちの部で一番のイケメンって誰だと思います?」
「えー、やっぱり小野屋とか?」
「小野屋先輩は誰が見てもイケメンすよね~。なんかもう、立ち振る舞いがイケメンっていうか。」
「あれは、ファンサらしいよ。」
「え!?あざとい・・・」
「どした、いきなり」
「クラスの女子がテニス部に桁違いのイケメン先輩がいるって言ってたんで、誰のことかなぁって。」
"桁違い"なんて晶の主観だろうと思うが。
「他に特徴ない?こう言っちゃなんだけど、北乃の男テニは顔面偏差値が高いと称されているからなあ」
確かに。うちの部はやたらとかっこいい先輩が多いし、マネージャーもちょっと気が強いけど美人揃い。小島が羨ましがっていたのを思い出す。
「あと身長も高いって言ってたんです」
「・・・だれだろう。やっぱり小野屋?あー、多岐か、川井先輩?」
「ですかねえ。名木原先輩もでかいっすよね。今どんくらいですか?」
身長でいうならうちの部では名木原先輩が1番高い。
「今どうかな。去年の今頃が82だったけど。」
俺が182センチだから、もうそれはないだろう。
「俺的には名木原先輩の可能性も高いんですけどねえ。そのイケメン」
「俺ぇ?ないない。ただでかいだけ」
この人自分がイケメンってこと自覚ないのか?
ひらひらと手を振って否定する姿が照れでも謙遜でもなくガチさが伝わる。
あざとい小野屋先輩と真逆だな。
「モテるでしょ?」
「モテません。たぶん小野屋だよ、そのイケメン。」
やっぱり晶が言っていたのは、誰もが認めるイケメンの小野屋先輩の可能性が高いか・・・
「ファンが多いよ〜。小野屋は」
「そうみたいですね・・・・」
フェンスの向こうには今日もギャラリーが確認できる。ほとんど毎日いる。
毎回同じ人とは限らないが、あの集団は小野屋先輩を推す人たちだと聞いている。
あの中に紛れ込めば晶もその「桁違いイケメン」に会えるのに。
明日提案してみるか。
でも、ライバル多くて怯むかも。
「さて。三佐倉、乱打するぞ~」
「はい、お願いします。」
本人は否定していたが、三佐倉から見てこの名木原先輩も結構なイケメンで、しかも優しいし、さらっとサポートしてくれたり面倒見がいい。
シンプルに男前。
この人が晶のいう先輩だったら、自分は応援してやってもいい。
まぁ、本人の問題だし。
様子見ておくに留めとこうと、三佐倉は暇つぶしはここまでにして練習に頭を切り替えることにした。
「三佐倉」
「何すか?」
「お前もイケメンよ」
「・・・ざす。」
なんとなく、ついでっぽく聞こえたな。
「無自覚か?もったいないなぁ」
無自覚な人に言われてしまってはどう捉えてよいのかわからない。
fin.
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