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『オセロー』 文学座

2024年7月2日(火)
@紀伊國屋サザンシアター
¥6500(一般)

このブログで散々書いてるんだけど、アタシは海外戯曲が苦手、もちろんシェイクスピア然り。好きな俳優さんがご出演となると、厳しい選択を迫られるのだ。
今回は浅野さんがご出演ということで、ちょっと迷ったけれど観ることにした。ビジュアルを見たところ、たぶん出番が多そうとの判断で。(←実は話の筋もよく知らないという不届きもの)
そして先行予約は手数料が高いから一般発売で購入。念のため発売日の時間ぴったりにポチったけれど、かなり激戦でびっくりしちゃった。え、こんな殺到するもんなの? かくして辛くも希望のアフタートーク回をゲット。後方サイドブロックだけど、贅沢は言うまい。

観劇直前に公式サイトであらすじを確認。古典はネタバレとか関係ないからね~。ふむふむ、ああそっか。どっかで聞いたことあるわ、この話。いろんなところで引用されたりモチーフになったりしてるからかな。
そして今回は忘れずに双眼鏡を持参! といってもそんなに使わなかったけど。

あらすじ
ヴェニス公国に仕える将軍・オセローは、元老院議員・ブラバンショーの娘・デズデモーナと愛し合い、ブラバンショーの反対を押し切り、結婚をする。一方、オセローの忠臣であるイアーゴーは自分ではなく、キャシオーが副官に任命され、オセローへ恨みを持っていた。憎悪と嫉妬を抱くイアーゴ―の巧妙な策略により、物語が複雑に絡み合い、オセローとデズデモーナは破滅へと追い込まれていく…。

公式サイトより

いやー、面白かった。意外、意外。
なぜか今年はシェイクスピアを観る機会が多くて(当社比)、『リア王』、『ハムレットQ1』に続いて3本目。どちらも良かったとは思ったんだけど、(やはりよくわからんな・・・)というのが根底にある感じだったのよね。
だけどこの『オセロー』はちゃんと普通に「おもしろい!」と思えた。シェイクスピアでそんなふうに思ったのは初めてじゃないかな。わかりやすかったし重苦しくもなかったので、とても楽しめた。セリフが聞き取りやすくて平易だったし、意外やかなりコメディっぽくて。

オセローを演じた横田さんは存じ上げず、たぶん初見。体を壊して2年ほどお休みしていたという話だけど、そんな感じは全くなくパワフルで豪快なオセローだった。豪放磊落と思いきや、妻の不貞を吹き込まれ信じ込んでしまい、嫉妬に駆られて妻を縊り殺してしまう。シェイクスピアの話ってだいたい「簡単に騙されすぎ」「なぜバレバレな嘘を信じる?」ってのがよく出てくるけど、またか。お前もか。
リア王を観た時にも、エドマンドの嘘に兄も父親もコロっと騙されて(何でやねーん!!!)って思った。服を着替えただけで別人になりすましてバレないし。おかしいやろ! ってことが気になりすぎて、物語をどう楽しめばいいのか判らなかったのよね。

今回も愛妻より部下の嘘を信じるんか・・・と思ったけれど、イアーゴーの口八丁手八丁の巧みさが絶妙で、なるほど~となった。公演パンフでも言及してあるとおり、オセローのコンプレックス(白人世界の中の有色人種)が原因でもあるらしいし。ふむふむ。
そのイアーゴーこそがマイ推しの浅野雅博その人なのだが、ざっと感想を掘ってみたところかなり好評のようでニヤニヤしてしまう。三谷幸喜氏もコラムで浅野さんをベタ褒めで、そうでしょそうでしょと更にニヤニヤが止まらない。舞台中央に盆(回り舞台)があり転換の際にそれを回すんだけど、浅野さん演じるイアーゴーがほぼそれを担っていたのだが。三谷さんは“こんなに格好良くストッパーを止める人を初めて見た”とまで。ありがたすぎる三谷さん、次回作には浅野さんにいい役を充ててください! 三谷さんは浅野さんの演技を初めて観たそうで、こんなに気に入ってくれたなら大いに有り得る話よね。

浅野さんのイアーゴーについて、なぜそこまでオセローを憎んでいたのかという件。あらすじには副官の任命についてとだけあるけど、そんなに単純なことではないらしい。観劇後にあれこれネットで読み齧ったところによると・・・キャシオーが文官寄りで実践経験がないこと、しかもフローレンス人(外国人)であること。妻エミリアとオセローが不貞をはたらいているという疑惑。そしてイアーゴーもデズデモーナに惚れているということ。
もう、かなりドロッドロである。エミリアの不貞疑惑は証明されてないけど、ここまで来たらオセローを陥れてしまえと思うのも無理はない気がする。実行しちゃアカンけど。

舞台を見ている限りでは、イアーゴーは極悪人というイメージはなく、普通の人。市井の一個人が飄々と他人を陥れる怖さ。ラストの「もう何も話さない」と空虚な表情でじっと前を見ている姿が、どなたかの言にMIU404の久住のようだとあり、正に!と思った。

アフタートークで、横田さんと浅野さんが同期だと知る。なるほど息のあった芝居だったと納得。ふたりとも楽しそうに演じていたように見えた。偉丈夫のオセローが疑念にのたうち回って叫ぶ時に、「嫌だ、いやー、イヤーゴー」って言っててめっちゃ笑った。

浅野さんの話ばっかになっちゃったけど、他の皆さんも素晴らしく。
デズデモーナのsaraさん、美しくて清廉な雰囲気がぴったり。歌声も佳き。文学座の舞台は初だそう。
アタシ的にはエミリアの増岡さんがとてもよかった。デズデモーナとのシスターフッド的な繋がりが何とも言えず。ふたりとも殺された後に、魂(幽霊?)となって見つめあっていたのが泣ける。

苦手だったシェイクスピアを面白いと思えたってことが嬉しい体験だった。また何かの機会に観てもいいなと思った。まあそれが面白いかはわからないけど・・・

キャスト:石川 武 高橋ひろし 若松泰弘 浅野雅博 横田栄司 石橋徹郎 上川路啓志 柳橋朋典 千田美智子 増岡裕子 萩原亮介 sara 河野顕斗

演出:鵜山 仁









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