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『桜の園』 PARCO劇場開場50周年記念シリーズ

2023年8月8日(火)
18時開演
@PARCO劇場
¥10,000(マチネ¥11,000,プレビュー¥9,000)

しがない非正規雇用には、昨今の舞台はチケット代が厳しい。今回はスルーするつもりでいたんだけど、生協で半額で販売があったのでポチってしまった。(『夜叉ヶ池』は奮発して先行予約したのに、半額以下のチケットがあちこちに出てて切なかった)

実はアタシ『桜の園』は観たことがなく、戯曲も読んだことがない。ややこしい名前の貴族の婦人がなすすべもなく凋落していく話で、悲劇として上演されているがチェーホフは喜劇のつもりで書いた・・・てくらいの知識のみで観劇に臨んだ。知らずに観ても何とかなるだろうとおもったんだけど、これは失敗だった。やっぱり内容を知った上で見るべき作品だったとおもった。

▼あらすじ
外はまだ凍えるように寒い5月。
領主のラネーフスカヤが、娘のアーニャや家庭教師シャルロッタと共に、5年ぶりにパリから帰ってくる。帰還を喜ぶラネーフスカヤの兄ガーエフ、養女ワーリャ、老召使フィールス、管理人のエピホードフ、メイドのドゥニャーシャや近くの地主ピーシチクたち。留守の間に領地を任せたガーエフには経営の才はなく、ワーリャが取り仕切るも負債は膨らむばかり。銀行は“桜の園”を競売にかけようとしている。
“桜の園”の農夫の息子だったロパーヒンは今や実業家。彼は桜の木を切り払い、別荘地として貸し出せば競売は避けられると助言する。しかし美しい“桜の園”を誇りにするラネーフスカヤとガーエフは、破産の危機も真剣に受け止めようとしない。

以前よりエピホードフから求婚されていたドゥニャーシャは、ラネーフスカヤに仕えてパリで暮らしていた召使ヤーシャに惹かれるようになる。
アーニャは家庭教師シャルロッタの無駄なおしゃべりや手品に退屈し、大学生であるトロフィーモフが抱く新しい思想に触れて、“桜の園”の外で新しい生き方を選ぶことを考え始めていた。

“桜の園”競売の当日にもかかわらず、屋敷では仮装パーティーが催されていた。そこへガーエフとロパーヒンが戻り、競売の結果を報告するのだが……。
来たるべき新しい時代を見据えて変革をいとわない人々。対して、落ちぶれてもなお過去にすがり、現実を見ようとせず時代の波に取り残される領主貴族たち。それぞれが向かう先とは……。

公式サイトより

120年前の戯曲なんだけど今回は時代不詳?ぽいアレンジで、衣装や小道具もレトロだったり現代風だったり。おじさまたちはスーツ、女性はブラウスにフレアスカート。時にはサイケなミニワンピ。あるいはTシャツ短パン、ビニールプールと水着。仮装パーティーではバナナの被り物にピエロ等々、乱痴気騒ぎ。なんつーかシュール。(夏の描写とはいえロシアにクマゼミはおらんやろ)
確かに陰鬱というよりは笑えるシーンも多くて喜劇っぽくはあったけど、明るくは感じなかった。幕開けと終幕の石棺といい、どうしようもない人たちの人間模様とか、やれやれといった気持ちになる。120年経っても人間て結局変わらないんだな。
自分がド庶民なんで、お貴族さまたちが現実に向き合わず、浪費を続けていることにめちゃくちゃ腹立たしくおもってしまう。
最後はみな桜の園から去っていくが、その後どうなったんだろうなあ。忘れ去られた老僕フィールスがひとり屋敷に取り残されたけど、彼はそのまま・・・? やっぱ暗いわ。

役者さんはみな素晴らしかったとおもう。
ムカつく女~と思いつつも原田美枝子のラネーフスカヤは美しく魅力的だった。誰もが彼女を愛していたのもわかるわ。ロパーヒンもペーチャも彼女の娘らではなく彼女しか眼中にない。でもそれがまた腹立つw
八嶋さんのロパーヒン、農夫の子だった彼が一番自分と価値観が近く(あの登場人物の中では)、彼の視点で見ていたんじゃないかな。切なかった。たぶん、今回の『桜の園』は、彼が主人公。

そして印象的だったのが永島くん。
好きな役者さんなんだけど、後から追加でキャスティングされたらしく、チケット買った時は出演するのを知らなかったのよね。でもって観劇の数日前に気づいて喜んだものの、見ていたらいつまで経っても登場しない。あれ??
途中で気づいたんだけど、「登場人物」ではない役だった。オレンジ色の作業着とヘルメットかゴーグル?(失念)で顔が隠れていたので気づかなかった・・・。
冒頭で石棺を上げる合図をしたり、中盤ではチェーンソーをこれみよがしに回したり。要所要所で登場し、不穏さを醸していくという。か・・・っこいい・・・。

この舞台自体はまあまあ楽しんだけど、『桜の園』の初見がこれでいいのだろうか? とはおもった。
あるあるだろうけど名前が難しい上に登場人物が多くて、誰が何の役だか判らなかったのよね。観終わった後に調べて、あの人は管理人だったのか、え、家庭教師? ペーチャって大学生?なんであの家に出入りしてるの?? ってなった。
この文章を書くために色々調べてたら、あらすじやら写真付きキャスト表が公式サイトにあるじゃん・・・それくらい事前に読めば良かったアタシの莫迦~。
現代風アレンジしてあるからこそ、支配階級と被支配者の区別がつかず、わかりにくいところもあったかと。でもそういう演出なのかもしれないけど。。

もともと海外戯曲が苦手で、実際観劇直後はピンと来てなかったんだけど、これはちょっと解釈によって全然違うお話になるかも? 色々比べたら、面白い・・・かも? と、ちょっと揺れ動いているアタシ。コロナ直前に公演中止になったケラさんの『桜の園』、すごく観たくなった!!

ラネーフスカヤ(領主)原田美枝子
アーニャ(領主の娘)川島海荷
ワーリャ(領主の養女)安藤玉恵
ガーエフ(領主の兄)松尾貴史

ロパーヒン(実業家)八嶋智人
トロフィーモフ(愛称ペーチャ・大学生)成河
ピーシチク(近隣地主)市川しんぺー

シャルロッタ(家庭教師)川上友里
エピホードフ(管理人)前原滉
ドゥニャーシャ(メイド)天野はな
ヤーシャ(召使)竪山隼太
フィールス(老召使)村井國夫

『桜の園』公式サイト

ローチケ宣言(舞台写真あり)

↑戯曲を元に書かれた小説もあった。面白いかな〜〜


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