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『Kappa』 扉座

2023年5月25日(木)13時開演
@座・高円寺
¥5,000

扉座はもうずいぶんご無沙汰していて、SNSなどで贔屓の役者さんが「観てきた」「おもしろかった」と発信しているのをちょいちょい見かける度に気にはしていたんだけど、結局そのまま月日が経ち・・・。今回は某所よりチケットの案内が来たので、これもご縁と思い拝見することに。
この記事を書くにあたって調べてみた。アタシが観たのは2008年、『人生のクライマックス』。なんと15年前。おっかーさんこと岡田達也氏の客演ね・・・そりゃ観るわ。てか内容全然覚えてない。このブログに記事があったので(過去の自分GJ!)と思って見に行ったらネタバレだからと何にも書いてなかった。過去の自分の莫迦・・・

昭和戦中の文豪・中島敦の未完の小説「わが西遊記」の「悟浄出世」と「悟浄歎異」の二編を換骨奪胎して、自省と沈思黙考に留まり行動しない知識人的なカッパの妖怪の沙悟浄が三蔵法師一行の冒険に加わり、考えるよりも先に行動実践がある、悟浄とは真逆の生き方の孫悟空らとの出会いによって、未知なる世界を体験する、沙悟浄目線の新しい西遊記を新作として上演します。
悟浄は引き籠もりの青年であり、心に思っても口に出さない大人であり、語りはしても自ら動こうとしない傍観者です。それは現代を漂う我々そのものの姿であり、中島敦の描いた悟浄の苦悩と屈託は、我々の病理だと思うのです。

横内謙介(公式サイトより)

中島敦はほとんど読んだ事がなく「山月記」を部分的に知っているくらい。西遊記の小説を書いていたとは知らなんだ。
沙悟浄がインテリだったことも、カッパ設定が日本限定ということも知らなかった! 天界のお偉い役人だったのが、宝物の器を割った罪で下界に落とされ、妖怪になったらしい。
今回の『Kappa』は、自分とは何かという悩みに囚われた悟浄が、その答えを探しに旅をするというお話。

有馬自由さんの悟浄は、おかっぱ(カッパ?!)頭にお皿を載せ、丸メガネに髭、ツイードのジャケットとベストに懐中時計の金鎖、ふんわりリボンタイというクラシックな出立がめっかわでした。お似合い~~
旅に同道する「魚怪先生」は岡森諦さん。15年前に観た時もこのペアとおっかーさんの3人がメインのお話だったよなあ。

前半はあちこち回っていろんな賢人に話を聞いて、でも悩みは解決できなくて。後半はお釈迦様の使いの指示で三蔵法師の一行に合流する。
西遊記と言えばゴダイゴのガンダーラと堺正章という世代なので、たおやかな女性が演じるお師さんはめっちゃ夏目雅子だった。美々しく高貴なこと。
というか、他のキャラクターも衣装や設定がほぼ「あの」西遊記を踏襲していたと思う。
猪八戒も良い味出してたし、悟空がまた元気いっぱいでキュートだったなあ。殺陣もおみごと。如意棒にゅっと取り出すのとか、どうやってたんだろ? 悟空役の方は初日直前に代役についたと聞いたが、まったく危なげない堂々とした演技でびっくり。

効果音やら諸々の音出しが、舞台袖付近に設えてある楽器類を使った生演奏?なのもおもしろかった。演者さんが割って入ってドラム叩いたり。

大冒険の末に悩みも解消し大団円・・・って、本当はコメディ仕立てながらも哲学がたっぷり含ませてあって、ふっと考えてしまったりもしたけれど。でも観終わった後の「おもしろかったー!」という満足感がありがたい。
カーテンコールの時に流れた曲が“The End Of Asia”。なるほど、ナイス選曲。帰宅するまでの道すがら、頭の中でこの曲がずっと流れてた。


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