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『空鉄砲』 柿喰う客

2022年1月17日(月)19:30開演
@スズナリ
¥5,000

柿喰う客は、2016年の柿フェスで『フランダースの負け犬』を観た以来。
過去のブログにも感想をUPしてある。(そのときのブログ記事はコチラ)その時も書いたけど、実はアタシ、たぶん中屋敷さんの作風(たぶん演出?)がチト苦手なのだ。中屋敷さん自身は面白くて興味深いんだけど(ヘンテコな人だよね)。
しかし劇団員には魅力的な方が多く、特に永島敬三くんはかなり好き。ご実家の酒屋で落語会が催されたときに、横浜から幸手まで出かけたくらいには好き。
今回はそんな永島くんと、玉置玲央くん・田中穂先くんの三人芝居、しかも濃厚なエロの香りがする・・・! ということで一般発売初日にチケットを確保した。

演劇界の風雲児「柿喰う客」の最新作は愛と欲望が支配する密室劇。
男×男×男が激しく火花を散らす本格官能サスペンス。
(公式サイトより)

観劇前日に状差しからチケットを取り出し、札入れに移したんだけどその時になって「A列だと・・・?」と震えた。これって最前じゃね?と予想した通り最前列だった(ひい!)。座席の位置、本当はセンターブロックの5〜10列目くらいが好きなんだけど、まあ贅沢は言うまい。最前列とはいっても舞台の面(ツラ)から席まで2mほど間を空けてあった。ご時世よな。

役者の御三方はめっちゃ信頼してるんで、懸案事項としては演出だな〜〜と用心しいしい臨んだ訳だけど・・・意外と大丈夫だった。というかけっこう、いや、だいぶ良かった。
観劇から3日たったいまも、グルグルと頭ん中で渦巻いてるのではやく吐き出さないと他のことが手に付かない・・・なんだこの状況。柿喰う客苦手だったはずなんじゃないのかアタシ。

☆ネタバレ注意

あらすじ
人気ミステリ作家(56歳)が自宅の浴室で変死。寒い夜に深酒して入浴、ヒートショックだろうと事故死扱いとされる。
作家の息子が父の死を映画化するとして、父に瓜二つの俳優を自宅に呼ぶ。実は俳優は作家の囲っていた愛人(男娼)の異母弟だった。
息子、愛人、俳優の3人。死んだ男を巡って情念に絡めとられてゆく───

コアで熱いファンの方々が濃ゆい考察を書いてくれてるので、アタシはほんわり感じた由無し事をそこはかとなく書きつくろう。あと、脳みそ足りてない自分のための備忘として。いつものごとく箇条書きにて。

・舞台上には何もない。床も壁も黒一色の素舞台
・最初に登場したのは永島くん。シンプルなスーツがお似合い
・2,3年ぶりにお姿拝見、はぁ素敵。お変わりなくて安心
・幕開けから息継ぎしてるの?ってくらいのセリフの弾幕!
・愛人は玲央くん、そりゃそうよね〜〜って配役
・ベロアっぽい紺のバスローブを素肌に羽織って艶かしい

・そして愛人の異母弟、田中穂先くん登場
・彼は『夢ぞろぞろ』『機械と音楽』で佳いなと思っていたのだ
・役名が“波瑠杉夏来”(はるすぎなつき)と聞き持統天皇!と

・とすれば他の役名も・・・全員、百人一首にある歌だ!
・死んだ人気作家の“網代木冬”(あじろぎとう)
→朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに あらはれわたる瀬々の網代木(藤原定頼)
・作家の息子“弾倉介凪”(たまくらかいな)@永島敬三
→春の夜の夢ばかりなる手枕に かひなく立たむ名こそ惜しけれ(周防内侍)
・作家の愛人“一旅御幸”(ひとたびみゆき)@玉置玲央
→小倉山峰のもみぢ葉心あらば 今ひとたびのみゆき待たなむ(貞信公)

・網代木の本名は“弾倉ゆめ”(「ゆめ」の字は配役表に無いので不明)
・これは息子と同じく周防内侍かな
・苗字の弾倉は手枕(たまくら)と、鉄砲の弾を掛けている?
・ミユキがオーディション受けたのは『紅葉館の殺人』の巡査役
・この作品のタイトルも「峰のもみぢ葉」からきてるよね
・あれこれ考えるも話の筋自体に百人一首は関係してないっぽい?
・歌の意味や背景でなく、詠み込まれた情念は深読みすればあるいは・・・

・官能の惹句の通り、めちゃエロかった・・・
・しかしまあ、いろんな性癖こってりですごいな(語彙消失)
・作家の息子への愛、息子の父への愛
・作家の愛人への愛、愛人の作家への愛
・息子の愛人への執着
・ナツキの異母兄への愛、父への愛
・愛憎ドロドロで結末も救いがないが、軽妙な笑いも時折

・弾倉家に受け継がれてきた古い火縄銃がある
・壊れて用を成さない銃、子を生さない男性器、それが空鉄砲
・男同士の行為も
・晩年(というには若いが)は不能となった作家も
・獣(けだもの)の涎(吐き出された精液)も
(ミユキは『紅葉館の殺人』を読み精通し自らの性を自覚した)
・作家の死因は実は『紅葉館〜』になぞらえた腹上死だった
・ミユキの作家に対する愛であり、復讐でもあった

・男性の、自身の性器に対する拘り(思い入れ?)の強さよ
・パーム(獣木野生著)でもアンジェラが言ってたなあ
・セックスしないと出られない部屋!(薄い本?!)
・って永島くんが高らかに宣言して笑いをとっていた
・皆さんそんなに耳馴染みのある言葉なんですかw

・ナツキは父からの愛を得られず、父を捨てた兄を憎む
・兄への復讐の為、兄の愛した作家に成り代わる
・穂先くんのナツキが、作家を演じるシーンがすごい
・ナツキが演じているのか、生前の作家の回想か渾然として

ラストシーンでカイナがミユキに銃を渡す。それはきちんと動作するよう修理したのだという。受け取ったミユキは銃を構え、カイナとナツキはマイクを摂り歌いだす。(“Kissからはじまるミステリー”というKinKi Kidsの歌らしいが、テレビを見ない私にはわからなかった)
歌い終わるところでミユキが斃れ、終幕。
なぜ歌ったのか謎・・・。面白かったからいいけど。
ミユキが死んだとアタシは受け取ったが、銃を撃ったのなら死ぬのはカイナかナツキのはずでは? 実は銃は直っておらず暴発したか、自分で自分を撃ったとか?

そもそも頭悪いアタシ、物事を深く考えたりあまりしないので、解らなんものは解らんままでも「まいっか」で済ませちゃう。よく解んないけどおもしろかったあ〜ってことで。
ものすごくコアで熱い考察とかもお見かけするけど、ひょえーって言いながら楽しく興味深く拝読しております。
柿のファンにはたぶんなれない、いちオタクの観劇メモがなぜかこんな文字数になってしまった。それだけこの演目に魅せられたんだろうな。
うまく吐き出せなくて、結局1週間アタマん中ぐるぐるしてたもん。やっと書き終わるのでほっとしてる(笑)
ともかく、永島敬三くんが大変にかわいかったので大満足。かわいいだけでなく、とてもカッコよかった。こんなカッコ良かったっけ?とか思ったりしてすみません。
配信で乱痴気(シャッフルキャスト)も観たけれど、本痴気の方が好みでした。(カイナ@玉置、ミユキ@穂先、永島@ナツキ)できるなら永島くんのミユキが観てみたかったなあ。


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