【インタビューコラム】スパイスカレーの隠し味
「私の好きな食べ物は、『食べる』って言うか、『作る』に近いんです」
こう話す内野紀惠さんは、現在フランス留学中。友人とルームシェアをする社交的な大学生だ。
彼女がスパイスカレーを好きになったキッカケは、コロナ禍の自粛期間中のこと。以前ならNetflixを見るだけでも楽しかったのに、いざ自粛となると、それまで楽しかったはずのこと、すべてがつまらなく感じられた。とにかく楽しいことがしたいのに、何をすればいいのかも分からない。
「『あまりにも日常にスパイスが足りない』と悶々としていたところ、スパイスカレーのレシピ本を見つけました。『日常にスパイスが足りないなら、スパイスカレーを作ろう!』そう思ったら、このセンテンスが気に入って。それで、作り始めたんですよね。もう楽しくて、めっちゃハマっちゃいました」
「なので、すごく気に入ってるんです。スパイスカレーにハマってるってことが。おもしろくないですか?『スパイスカレーが好きな自分が好き』って」
スパイスカレーが好きな自分が好き。
どういうことだろう?
「ちょっと話が変わるんですけど、私、コーヒーが全然飲めなかったんです。でも『コーヒー飲んでる人カッコイイな』って、憧れはありました。コロナ禍になったとき、家にコーヒーしか飲めるものがなくて、仕方なく飲んでいたら飲めるようになったんです。そうしたら、『コーヒー飲んでいる自分、カッコイイな』って、自分に酔える(笑)」
「そんな風に、『これをやってる自分が好き』とか、『この人といるときの自分が好き』とかって、自分を幸せにしてくれる自分が誰にでもあると思うんです」
「やっぱり、自分のことを好きでいられる時間って、幸せじゃないですか。だから、第一声では『スパイスカレーが好き』って言っても、そのココロは、スパイスカレーが好きな自分が好き。好きになりたい!」
そんな彼女は、もはやスパイスカレーの味にはこだわっていない、とのこと。
「実は私、自分に確固たる自信がないんです。だから、周りから固める。『これをやってる自分が好き』って感じられたら、ちょっとずつ自己肯定感も上がるし」
「誰でも、自分に対してどこか不満なところはあると思うんです。でも本当は、そんな部分があるのは幸せなこと。だからこそ、そんな自分も含めて、まるごと愛したいんです」
どうやら隠し味は、“自信のない自分”のようだ。
同じスパイスが、私の胸の奥でも膝を抱えている。今宵はスパイスカレーを作って、自分をまるごと愛してみよう。
※ これは2022年1月にオンラインで10分間のインタビューを実施し、まとめたものです。初対面だったけれど、「好きな食べ物」を入口に、心の中に分け入ってくれた紀惠さんに感謝します。ありがとう。
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