なぜか女の私がメンズのスーツを買ってしまった話

私は若い頃、とても洋服が好きだった。DCブランド全盛期で、シーズンごとにたくさん洋服を買っていたものだ。幸い、高価なバッグや靴にはハマらなかったのだが、それでも収入に占める洋服の割合は大きかったと思う。

今回の話は、そんな頃に私宛てに掛かってきた１本の電話から始まる。

その頃、私はカーディーラーに勤めていたので、休みのほとんどは平日の２連休だった。そんなある秋の休みの１日目にその電話は掛かってきた。電話の主は、私の行きつけのブティックだった。しかも、男性の店員からだ。疑問に思いながらも私は通話を始めた。

「もしもし、みゆ様でいらっしゃいますか？わたくし〇〇〇〇行きつけのブティックの3階メンズフロアの◇◇と申します」

なんでメンズフロアから電話が掛かるのだろう。私はメンズの洋服も買ってはいたが、それはほとんどが1階の比較的リーズナブルなブランドのメンズの洋服だった。ブランドで言うならMEN'SFLANDEやBOB'S TAILOR（EASTBOYのメンズ版）だ。メンズフロアにあるものは、COMME CA DU MODE MENやPEYTONPLACE FOR MENだった。

「今日お電話を差し上げたのは、新作のお洋服が入荷しましたので見に来られないかなと思いまして」

新作が入荷したと言っても、一応私は女だ。レディースフロアから掛かってくるのなら分かるが、いったいなぜ？そう思うも、店員さんはなおも続ける。

「今度のお洋服は、みゆ様にもお似合いかと思いましてご連絡いたしました」

との事だ。幸か不幸か私の休みは平日で日中は自分ひとりで暇なのだ。休みは明日もある。さらに私は好奇心が旺盛ときている。

「ああ、そうですかぁ。明日も私は休みなんで、ちょっと覗きに来ますね」

ああ、言ってしまった。明日、私はブティックに洋服を見に行くと言ってしまった。夏の終わりに秋冬物の洋服を買ったばかりだというのに！
で、でも。見るだけ、見るだけだ。けして、買わないんだ。だって、それはメンズの洋服なのだから。

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翌日の午後、私は行きつけのブティックにいた。それも、いつもはほぼ行く事の無いメンズフロアに。ここのブティックは建物1棟まるまるそこのブティックで、それぞれのフロアで置いているブランドが異なっていたのだ。

「こんにちは」

恐る恐るドアを開けて中に入ると、店員さんがにこやかに迎えてくれた。

「いらっしゃいませ、みゆ様。お待ちしていました。まずはこちらへどうぞ」

そう言うと、私をスーツのコーナーに案内した。

吊るされたスーツは、ベーシックな色の物もあるが綺麗な色目のスーツがたくさんある。ラベンダー色、くすみグリーン、たまご色、薄いベージュなどなど。思わず、レディースのパンツスーツみたいだなと思った。

「みゆ様は、こちらがお似合いみたいですよ」

とラベンダー色のスーツを手に取った。とても、綺麗な色で生地も上質な感じがした。鏡に向かって当てて見ると、店員さんが言うようによく似合う。そして、言われるままに試着した。私は背が高いが、さすがにスーツとなると大きくて、あちこち補正が必要みたいだ。でも、ラベンダー色は悔しい事に私によく似あっている。いろいろ着回しもできそうだ。

「これ、いただきます」

ああ、やってしまった。でも、今回の買い物はこれだけでは済まなかった。

「みゆ様。革ジャンもいいのがあるんですよ」

革ジャン。たしかに、革ジャンはちょっと欲しいとは思ってはいた。だけど、高価だしなと思いながら見てみた。
私に見せてくれた革ジャンはライダースジャケットだった。黒の上質そうな物で革のいい匂いがする。中はキルティング加工がしてあり、暖かそうだ。それに、カッコいいし、着てみるとこれも背の高い私には似合ってしまうのだ。

「これも･･･いただきます」

買い物はこれだけで終わらずに（オイッ！）、さらにテンセル素材の柔らかなGジャンとロールネックの水色のカットソーとファスナー開きで羽織にも使えるグレーのトップスを買ってしまったのだ。
全部で5点、COMME CA DU MODE MENの洋服を買ってしまった。またしても、やられてしまったのだ。

でも、買ってしまったものは仕方ない。元を取るためにも着まくってやる！と思った。メンズの服も、上手く合わせると女の子らしくかわいく着られる。

あのラベンダー色のスーツは意外と使えるいいヤツだった。
さすがにスーツでは着なかったが、ジャケットやパンツを単品でコーデしてよく着た。メンズだから、パンツ丈もたっぷりしていて私の脚が綺麗に見えた。ジャケットも重ね着コーデをしても、モコモコにならずにとても重宝した。
だけど、あのスーツはベーシックな色はともかく、レディースみたいな綺麗な色はどんな人が着るのだろうか。私のような身長の高い女子が着るのか、オシャレ男子の遊び着なのか。さすがに、あの綺麗な色では会社には着ていけないと思う。まさか、飲み屋のお兄ちゃん用だったのだろうか。

他の洋服も、とても着やすいしコーデしやすくて、気に入って長く着た。だから安くはない買い物だったが、元は取っていると思う。あの日掛かってきた電話には驚いたが、これもひとつの出会いだったんだろう。

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古い写真に、あの時買った洋服を着たものがあったので、ちょっと晒してみようと思います。残念ながら、スーツの写真は撮っていなかったです。

テンセル素材のGジャンとファスナー開きのトップスをコーデ。下に履いているのは、FLANDECLUBのショートパンツ。
この頃のロングスカートは、今売っている物みたいにスカート丈が長くなくて、私が履くとふくらはぎの一番太い所に裾が来るのであまり履けなかったんです。
それで、ミニスカートやショートパンツをよく履いていました。
これは、社員旅行の出発前ですね。たしか、霧島に行ったんだったかな。
手に持っているのは、三ツ矢サイダーかと思っていたけど、拡大してみたらスーパードライだったという(笑)
でも、この時は飲んでないですよ。だって、まだ早朝だったんだもん。それに、バスではなくて何台かに別れて車で行ったんです。

これは、全休の日に会社の女の子達と遊園地に行った時。北部九州の人御用達のグリーンランドですね。平日で、人が少なくてめっちゃジェットコースターに乗りまくりました！
革ジャンはほんとに暖かで、この下はインナーと薄いカットソーだけでも全然寒くありませんでした。
ジーンズの裾はもう少し長い方が良かったんですけどねぇ。若干寸足らず。
で、私この時ベレー帽を被っているんですけどね。
雑貨屋さんで買ったこのベレー帽がものすごくかわいいんですよ！
一面にキラキラの大きなビジューがいっぱい付いていて、ものすごく派手でものすごくかわいいベレー帽でした。今でも被りたいです。

なんだか、好きな物の話をする時は熱が入りますね。
なんだかんだ、今でも洋服は好きですね。
もう着ていく機会があまり無いので、買わなくなりましたけど。

今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪