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Global Business Trend vol.13 |グローバル企業は上層部ほど多様化すべき理由

2020年は前代未聞の激動の1年になっているが、たくさんの命が奪われ、人々の生活が一転する中で、普遍的な意識改革も生まれそうだ。その一つは、「多様性」に対する意識。特にアメリカでは、ウィルスは人種差別をしないはずなのに、有色人種の死亡率が白人より多いことに疑問を持つ人が増え、更にジョージ・フロイド氏の警官による殺人事件があとを押し、「多人種・多文化・多ジェンダー」を意識するのが当たり前な世の中に変わりつつある。「多様性」を意識する動きは、ビジネスとも切り離せない。

多様性を意識することで、利益が19%アップ?

BCGが2018年に行ったリサーチによると、「多文化・多人種・多ジェンダー」で構成されたマネジメントチームがいる会社は、ボトムラインが上がり、利益が19%アップしていることを、1800以上の会社を調査したことでわかった。これは、色々な価値観や背景を持った人が集まることで、社員の意見も活性化され、より効率的で新しく、今までにない考え方や、革新的なアイディアに繋がる確率が高いからだそう。もし多様な人材を採用することが会社の利益に直結しているのならば、これは試さない手はない。特に日本では、積極的に「多様性」を重視して採用している会社はまだまだ少ない印象なので、狙いどころなのではないかと個人的に思った。

多様性を意識すれば、炎上を防げる

度々SNSを騒がす、ファッション業界の人種差別スキャンダル。D&Gの誤解を招く中国人の起用の仕方H&Mの黒人少年モデルのキャンペーンが記憶に新しいが、先週、またもや人種差別的な表現をしたキャンペーンがネット上で話題に。イタリアメゾンのMARNIが、ブラジルで撮ったビーチサンダルのキャンペーンを発表したが、その表現が問題視せずにはいられない内容だった。ビジュアルは、水着と民族的なアクセサリーを着用した数人の黒人モデルが砂浜でポーズを取っているもの。しかし、そのうちの一人が足元にある鎖につながれているように見えたり、「ジャングルで裸足(Barefoot in the jungle)」「着飾った白の女王は従順かつ彫刻のようだ(The adorned White Queen appeared compliant yet sculptural)」という表現があったりして、奴隷貿易や、ブラジルに住む黒人の歴史的背景がわかる人間が意思決定者だったら、絶対に承認しない表現が多数含まれていた。

更に残念なのは、このキャンペーンを撮ったブラジル出身の写真家は、大手メゾンの企画に参加できるという理由で、12万円ほどの破格な契約金で写真を撮り、キャンペーンの最終的なアウトプットは確認できなかったため自分の商品がどう使われていたかわからなかったと話している。せっかく白人以外のクリエイターが起用されても、搾取されたような状態でプロジェクトが終わってしまう・・・これほどの皮肉はあるだろうか。先述したD&Gの中国人モデルを使ったキャンペーンも、モデル本人は折角世界を舞台にして活躍するワンステップとして依頼を受けたのに、「人種差別的な表現に加担した」としてSNS上でバッシングを受けてしまった。大手ブランドの上層部が、多様な人種や文化背景の人々で構成されていないがため、それが連鎖的に有色人種の人々のチャンスを潰すことにも繋がっている。

人種差別的な表現で一度炎上してしまうと、ブランドイメージはもちろん損ねるし、利益だって減る。D&Gのキャンペーンが中国で炎上した時は、不買運動が各地で起こり、しょーもキャンセルに。大幅に利益が下がった。そこから回復するのにも時間がかかり、年度の終わりに、アジア市場は25%から22%に下がったと数字が出ている。H&Mの、黒人少年が不適切に起用されたキャンペーンが炎上した際、南アフリカでの営業利益は14%減。過去6年間で最大の減益となり、H&MのCEOが対応を余儀なくされ、その後170店舗の閉店に繋がった

世界の「多数派人種」も多極化する

今後世界が注目しているエマージングマーケットの多くは、白人以外の人口が多い国がほとんど。中国やインドはもちろん、タイ、マレーシア、コロンビア、南アフリカ、ベトナム、フィリピンなど、有色人種が占める割合が圧倒的に多い。また、アメリカは、2045年までに白人は少数派になるという調査結果も出ており白人の貧困層も年々増えている。そして興味深いのは、18歳以下のアメリカ人だけで見ると、もう既に2020年時点で白人はほぼマイノリティと化しているという調査結果もある。また、南アフリカでも、白人の貧困化が進んでおり、「富裕層=白人」という時代は終わりに近づいているのかもしれない。過去に書いた記事で、「白い肌=ステータス」という文化が世界の広域で根付いていることについても触れた。マーケットがシフトする上で、このような伝統の意識改革も、世界中で行う必要がある。

企業の意思決定者の多様化が必要

多様性を尊重することは、倫理的に正当なだけではなく、利益にも繋がる。この事実がもっと浸透すれば、世の中は物質的にも、精神的にも、もっと豊かな場所になるのではないか。企業上層部の意思決定者を多様なバックグランドを持つ人材で編成することで、ビジネスチャンスも広がるし、利益拡大も期待できるだろう。

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