Global Business Trend vol.5 | フードデリバリーのビジネスモデル
最近一層注目を浴びるようになったフードデリバリーサービス。街中にはUber eatsの配達員が日々増えているように感じる。
#StayHome が続く中、フードデリバリーは大活躍しているので、かなり収益が上がっているのではないかと思っていた。しかしBusiness Insiderによると、レストランは手数料を引かれるためあまり儲かることができていないし、デリバリー側も利益率が低く、現金集約型のビジネスにもかかわらず競争が激しいため、あまり収益を上げることができていないようだ。
原価の方が高い?
昨年ファイナルシーズンを迎えた、海外ドラマSilicon Valley。オタクの主人公が起業をして夢を叶えようとするコメディドラマで、スタートアップ聖地シリコンバレーのリアルな模写が話題になった。ドラマ内に、主人公リチャードがピザのデリバリー会社「スライスライン」を買収するエピソードがある。「スライスライン」は、「ドミノピザからピザを正規価格で購入し、自社のパッケージに移し替え、購入した価格より安く売る」サービスだったため、スライスラインのピザは売れるごとに赤字が出ていた。そこで、リチャードはわざと大量注文をし、スライスラインに打撃を与え、買収に結びつけることに成功する、というストーリー。(S5E1の該当シーンはこちら)
この話で「アービトラージ(裁定取引)」の存在を知ったのだが、現在大活躍しているフードデリバリーサービスDoorDash(ソフトバンクが支援)でも同じ出来事が起きていた。
とあるジャナーリストが、Google マップを使うと行きつけのピザ屋からデリバリーが頼めるようになったことに気づく。普段デリバリーサービスを実施していないはずなので調べると、DoorDashが配達を肩代わりしていたことが発覚。そして、そのピザ屋が普段売っている$25のピザをDoorDash経由で頼むと、$16で買えることを発見した。スタートアップの動向を追いかけている彼は、DoorDashの運営方法を調べる。すると、DoorDashはコールセンターから直接ピザ屋さんにオーダーをかけ、$25のままで仕入れ、自分たちでデリバリー用の袋に詰め替えバイクで配達をしていた。DoorDashが自前で購入した袋に詰め替えて配達していたため、ピザは保温対策がされておらず、このピザ屋には「届いたピザが冷たかった」とクレームが殺到。レストランレビューも悪くなってしまった。
DoorDashはなぜ高い価格でピザを買い、安い価格で売っているのか?これは、「アービトラージ(裁定取引、割安な方を買い、割高な方を売ることにより、理論上リスクなしに収益を確定させる取引き)」なのだと、先述したジャーナリストの記事で説明されている。しかし、この戦略を成功させるには、現在のDoordashの市場シェアでは足りない。2020年4月時点のアメリカ・フードデリバリー市場の内訳は、Uber Eatsが26%、DoorDashが47%、Grubhubが21%、Postmatesが12%(先日、Uber EatsはGrubhubの買収意向を発表した)。各デリバリーサービスの業績を見てみると、Uber Eatsは2019年の四半期レポートで、4億6,100万ドルのロスを報告。DoorDashも、4億5000万ドルほどのロスを報告している。
フードデリバリーが成功するには?
フードデリバリーは新しく始まったものではなく、「出前」と言う形で古くから存在しているし、ドミノピザやピザーラなど、自社で配達を行っている会社はたくさんある。第三者のデリバリーサービスが苦戦しているのには、その後に繋がる消費者のアクションがないからだろうか。
デリバリーをある種のマーケティングコストと捉え、お店のファンを増やす。いずれはレストランに足を運んでもらい、配達コストを減らすことをゴールとすれば、収益に繋がるのか。店内で食べるオプションが無くても、ドミノピザの「お持ち帰りで一枚無料」のように、店頭に取りに来てもらい配達料をカットする仕組みをセットで考えないと、収益化しにくいのかもしれない。出前やデリバリーを成功させるには、従来のレストランビジネスとセットにすることが必要不可欠なのか。そう考えると、デリバリーだけを提供するサービスは、持続するのが難しそうだ。
売り上げが出ないデリバリーサービス、儲からないレストラン・冷たいピザに起こる消費者と言う構造が、lose-lose-loseに見えてしまうが、win-win-winにするにはどうすれば良いのか。今後デリバリーサービスのトレンドを追いながら、経済学をもっと勉強してみたいと思った(笑)。
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