綾瀬さんと真谷くん18「写真」

卒業式が終わり、運動場で写真撮影などをして別れを惜しむ時が来た。そんな様子を突っ立って見ていると、ふいに声をかけられた。
「優? 先輩たちと写真に撮らないの?」
声の主は響だった。
「あぁ、ちょっと考え事しててね。響は写ってきたの?」
「うん。委員会でお世話になった先輩たちと写真撮ってきたよ」
「そうか。じゃあ僕も先輩たちと写真に撮ってもらいますか」
そのあとはたくさん写真に写った。そんな楽しい一時も終わりが近づいてきた。姉ちゃんを見つけようと探してたら、姉ちゃんが同じクラスの先輩に写真をせがまれている所を見つけた。と言うかあれなんだ、もしやラブレター? 物好きもいるんだなぁ、ってうちのクラスの人もラブレター持ってない? あと女子も渡してない? ねえ、うちの姉ちゃんの属性がおかしなことになってる気がするんだけど。
「めっちゃ囲まれてるなぁ……」
こりゃ写真は無理かもしれない、とその場から立ち去ろうとしたら、
「優も一緒に写らない?」
どうやら姉ちゃんに見つかったようだ。まぁこれで写るのは最後にしよう。そう思い姉ちゃんがいる方向へ向かった。
「綾瀬ちゃんも!」
「あ、はい!」
僕たちをピッタリと自分の前にくっつけて(背が高いからってこんな芸当してくれなくたっていいのに)姉ちゃんは一歩後ろに立つ。
「主役は前に来てよ」
「やだね、顔がデカく写る」
そんなことかよ! 仕方がないのでそのまま写真を撮ることにした。
「はいっ笑ってー」
 パシャリとシャッター音がした。撮れた写真を確認するとばっちりと撮れていた。僕と響だけが。
「ね、ねぇちゃん?」
「うんうん、いい写真だねぇ」
「しらばっくれないで⁈」
いや何をどうしたらこうなるんだよ。
「あー、大丈夫、一枚目の方にはちゃんとかなも入ってるから」
先輩がフォローを入れてくれるがそう言うことじゃない。
「まぁ、お幸せに」
写真を撮ってくれた先輩に言われる。
「え、なんで」
「こっそり付き合ってるんでしょ。風紀委員は卒業の時だけ羽目外していいって言われてるから、そうやって知ってる範囲で付き合ってる人と一緒に映るって名目でツーショット量産しがちなのよ。もはや清巌高校の風紀委員卒業時の恒例行事」
そんな伝統いらないよ……

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