綾瀬さんと真谷くん73「修学旅行」

今日は修学旅行だ。初日の行先は広島の福山市だ。
民泊となるみたいだからちょっとどきどきする。
必要な荷物をバスの下の収納に入れ、3日目のラフティング後の替えの靴や水筒などを入れたバッグを車内に持ち込む。
バッグの中には、事前に買った300円分のグミも入れてある。
僕は事前に配られた座席表を見て指定された席に座る。どうやら一番前の席だったようだ。
席は二人がけだったので左側の席に座る。
もう1人座るはずだったけどよく見てなかったな。
しばらく窓から景色を眺めてると肩を叩かれた。振り向くとそこには響がいた。
「響どうしてここに?女子は後ろの方の席じゃなかった?」
「そうですけど、優の隣に座りたいなと思って先生を説得して変えさせてもらいました」
まじかよ。というかよく話通せたな。
「そうなんだ」
そう答えると響は僕の隣に座った。
しばらくするとバスガイドがマイクを通して挨拶をした。
「清巌高校の皆さんおはようございます!」
車内に声の揃った挨拶が響いた。
「今回ガイドを務めさせていただく福原と申しますよろしくお願いします」
福原と名乗った人物は大和撫子という言葉が似合う若い女性だった。
車内に拍手が響く。
「皆さんはシルバーウィークにどこかに出かけられましたか?」
そういや隠れ趣味の魚釣りをしたな。
釣った魚から針を外すのにてこずったけど。
僕は手を挙げた。
ガイドさんがマイクを差し出した
「魚釣りをして、アジ5匹とサバ3匹、それとタコも釣りました」
「それは凄いですね!魚釣りは得意なんですか?」
「そんなに得意では無いですけど、たまにする程度ですね」
「答えてくれてありがとうございます!他にはいませんか?」
後ろの方で手が上がったようだ。
ガイドさんがその方向へと向かっていく。
「優って魚釣りするんですね」
響が興味津々に聞いてくる。
その目はいつもより輝いて見えた。
「まぁね。釣れない時はほんとに釣れないけど、タイミングが良ければ結構釣れるよ」
「そうなんですね」
ガイドさんが前の方へと戻っていく。
「それではバスが発車しますのでご注意ください」
ガイドさんがそう言うとエンジンがかかった音がした。
しばらくするとゆっくりと動きだした。
沿道に集まった人たちに小さく手を振った。
10分してバスが高速道路に入り、街並みを見下ろす形になった。
30分くらいバスに揺られているとガイドさんが話し出した「あちらの方に見えるのが標準時子午線です」その声につられて右側を見ると標準時子午線を示す建造物があった。
これまでは地理の資料集でしか見たことがなかったが、実際に見ると新鮮味があった。また30分くらい揺られていると岡山県のSAに到着した。
ここで一旦休憩をとるみたいだ。バスを降りて、めいっぱい深呼吸をする。
左を見ると桃太郎の像があった。
休憩を終えて、車内へと戻る。
全員が車内に乗ったのを確認してバスは福山へと向かいだした。
車内に流れる事前にクラスメイトたちがリクエストした曲が再生される。
その曲を聞きつつ、窓から景色を眺める。
瀬戸内海が眼前に見え、港町がその手前に広がっている。
高速道路の標識を見ると広島県に入ったようだ。
しばらくするとガイドさんが解説をしだした。
「この辺りは鞆の浦と呼ばれ、室町幕府の亡命政権が一時期置かれたことがあったそうです」
まじか。初めて聞いたぞ。
しばらく標識を眺めていると尾道市に入ったみたいだ。
ガイドさんが名前の由来について解説をした。
「尾道の由来はかつて3つの山が海岸まで迫り平地がなく、海岸沿いつまりそれぞれの山の尾根沿いに一筋の道があったことからこの名がついたと言われてます」
なるほどそんな由来があったのか。
景色を眺めていると最初の目的地に着いたようだ。



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