綾瀬さんと真谷くん53「春眠暁を覚えず」

春眠暁を覚えずとはよく言ったものだ。春は心地よい暖かさと程よい風で睡魔が幾度となく襲ってくる。
昼休みに屋上へ行くことが多いがほとんど睡魔にやられて置かれているベンチで寝ている。今日も屋上で昼寝をしていると誰かが近づく足音が聞こえた。
特に気に留めず眠りこけていると耳元で聞きなれた声がした。
「優こんなところで何してるんですか?」
「ん……?」
重い目を開けると僕の顔を覗き込む響がいた。
「ん……響どうしたの?」
「優の姿が見つからなかったので優が良く居そうな場所を探し回っていて屋上に来てみたら居たので声をかけました」
「そうだったのか……」
なんとなく時間が気になり腕時計で時間を見る。良かったまだ時間はあるみたいだ。
「ほら教室戻りますよ優」
「ん……まだ眠気が取れてないから腕組んでもいい?」
「良いですよほら腕を差し出して」
「ありがとう響」
教室へ戻る途中、廊下で声がした。
「見て、綾瀬さんと真谷くん腕組んで歩いてるよ」
「仲が良くて羨ましいな〜」
「なんか真谷くんの方寝てるように見えるけど」
「ほら優起きてください!」
「ん〜……」
「仕方ないですね……こうすれば起きるでしょうか……」
響が何か言ったように聞こえたけど気のせいかな……そう思っていたら耳元で囁かれた。
「起きないと優の寝顔を学年のdiscordサーバーに送りますよ」
その言葉で完全に眠気が吹っ飛んだ。
「寝顔送ってないよね?!」 
そう響に問いかける。
だが  \ピコッ/ discordの通知音が一斉に聞こえた。
確認すると『真谷くんの寝顔可愛すぎる』 
『これが真谷の貴重な寝顔か』 
『普段とのギャップがすごい』
『寝顔もかっこいいな』
恐る恐る響の方を向くと
「ごめんなさい送っちゃいました」
てへっと笑った響がいた。そんな笑顔をされたら、許したくなってしまう。
「……」
「どうしましたか?」
「なんてこったい……」
僕は膝から音を立てて崩れ落ちた。





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