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「パプリカ」読了

去年はなんだかあまり読書をする時間を取れなかったので、今年はたくさん本を読もうと思ってまず積読の解消に努めております。

というわけで筒井康隆さんの「パプリカ」を読了。

私は今敏監督の映画「パプリカ」が大好きなので、その原作ということでいったいどんな表現がなされていればこんな映像になるのかと興味深く拝読しました。

※ここからは作品のネタバレが含まれております。未読の方はご注意ください。


いやぁ、すごかった。

まさに読む幻覚剤というところでしょうか。個人的には「読むと発狂する」と名高い「ドグラ・マグラ」よりも意識を混乱させられる物語なのではないかと思いました。

わざとポンポン飛んでは入れ替わる視点、読んでいるうちに何が夢で現実か分からなくなってくる感覚は物語の最後までしっかりと混沌を極め、2つの世界の境界が入り混じって揺さぶられる作品が大好きな私としてはなぜ今まで読んでいなかったのかしら!と後悔することしきりでございました。


映画を先に見てしまったのでどうしても映画ありきで考えてしまうのですが、原作は映画よりも随分とセクシュアルな雰囲気で、こう言ってはなんですがヒロインであるパプリカの貞操観念がわりとユルめ。

そこがまたゆめうつつを踏み外すアイテムとしてよく働いているわけですが、誤解を恐れずにいうと、パプリカの性欲の持ち方は少々男性的なのかな、と思ったりしました。

モノガミー的な愛情が女性的とは決して申しませんが、彼女のそれは決してポリアモリストや博愛的なものではなく、作品中一貫して時田氏に深い愛を抱いているにも拘らず敵役の男性にまでもあっさりと欲情できてしまうところが感情と欲情が密接している女性的な性欲とは少し違うなと。もちろんこれは「そういう女性がいない」ということではなく、またこの性愛の持ち方、愛され方がパプリカの行動力の軸として欠かせない要素となってくるわけです。

で、映画の方はそのあたりをうまく「一般的に受け入れやすい」匙加減に調整してあって、これがまた上手い。

原作と映画の違いは多々ありますが、私的にはこの「パプリカの性的さ」が最も2つの作品の異なる部分ではないかと思ったので敢えてピックアップさせていただいた次第です。

ぶっちゃけていうと、色っぽくて健康で奔放で、でも決してヤれない高値の花がやっぱりみんな好きなのよ。今敏監督のバランス感覚の素晴らしさを感じると共に、でも原作のパプリカの罪のない淫蕩さというのはまさに「夢の中」だからこそ成しえるものであり、人の深層心理を描く上では欠かせないものだからこそ、文章において夢と現実を混然とさせる上では非常に効果的な要素であるなあ、と感心したのでした。

みんな、夢の中で「これは夢だ」と分かったらイヤらしいことしたりするでしょ?ちなみに私は道路の真ん中で全裸になったりします(笑い)。



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