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小売りOMOの神髄は店舗スタッフの接客にあり?

だいぶ前のことだが、久々のスキーに行くにあたり雪山用のニットキャップをネットで色々と探していた。たまたまヨドバシドットコムでいくつか気になるものを見つけた。出店は全て石井スポーツ。長年ファッション業界に身を置きながら知らなかったのだが、石井スポーツは2019年からヨドバシホールディングスのグループ会社になっている。片っ端から気になるキャップをポチポチしながら、まずは全て試着してみて似合うものを買おう!と、ヨドバシカメラの新宿西口店での店頭受け取りサービスを選択。

商品の用意ができたとメールがきたので、ヨドバシカメラと同じビルに入っている石井スポーツのカウンターに行き、予約番号を差し出すと、今回のオーダーはヨドバシドットコムなので家電の受け取りカウンターに行ってくださいとのこと。数種類のキャップを試着する気満々で行ったので、事務的で無機質な家電の受け取りカウンターを前にすると、少々気持ちが萎えてきた。鏡はないし、しかも後ろには順番待ちの列ができているし、この場所で時間をかけて吟味するなんて無理ーー!とプチパニック。

カウンターでは、家電量販店ならではのハッピを羽織ったスタッフが私のオーダーした商品を全てそろえ、予約番号と照らし合わせ、間違いなければそのまま会計へ、と手際よく進めていく流れを思い切って断ち切り、自分の意思を伝えた。試着してから買う商品を決めたいのですがどうすればいいですか?と。

一瞬スタッフの顔が固まったので、やはり家電量販店にそこまでのサービスを求めるのは無理か、、、と諦めかけたとき、「わかりました!ここには鏡がないので隣のビルの石井スポーツの試着室に行きましょう!着いてきて下さい!」と、おもむろに商品と一緒にカウンターを抜け歩き出した。スタッフを追いかけるように、石井スポーツの入っている隣のビルへ行き、試着室へと案内された。私を連れてきてくれたスタッフの役目はここで終了と思いきや、鏡の前でキャップを試している私に同じスタッフが「お客様にはこちらの方が似合いますね」とファッションの接客をしてくれる。家電量販店のハッピ姿のスタッフが、だ。それはシュールというのか、なんとも不思議な光景だった。

無事購入するキャップ一点決めたので、会計のために受け取りカウンターのあるビルに戻ろうとすると、石井スポーツ内で会計するのでここで問題ないとのこと。確かに石井スポーツとヨドバシカメラは2019年に同じ会社になってはいるが、ここまでシステムも統合されているとは、期待していなかっただけに嬉しい誤算であり、忘れられない心地よいショッピング体験の一つとなった。

ヨドバシカメラといえば、早い段階からECを店舗と同じ一つのチャネルと捉え、基幹システムを統合し在庫管理 から物流までの一元管理を可能にし、ヨドバシドットコムは今では日本のEC市場でAmazonに次ぐ売り上げを誇る。もちろんビジネスの土台を支えるシステムやそのオペレーションが素晴らしいのは言うまでもないが、OMO(online merges with offline)としてここまでストレスのないショッピング体験の提供はそれだけでは実現できない。やはりOMOの成功には、お客様と現場でコミュニケーションするスタッフの対応力も大きな一端を担っているのではないだろうか。

物流のドライバー問題が浮上し、といったところでオンラインでのショッピングは減るどころか増えることが予想される現在、OMOは今まで以上に求められるショッピングスタイルになってくるのではないだろうか。その時に、お客様に選んでもらえるかどうか、もう一度購入してみたいと思われるかどうかは、システム以上に現場スタッフの力量が大きく左右するように思えてならない。

今回機転の利いた接客をうけて、ヨドバシカメラの底力と可能性を見た気がした。

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