振り向きざま  上海 金山

たった一年前のあの夏が、遠くなつかしい。

彼と密に繋がりあっていたあのむせかえるような日々。気だるい体を重ね、上気した虚のちからを持て余し、自転車に乗ってどこまでも二人走った。強烈な夏の太陽、けたたましく鳴くセミ、夜の広大な田んぼに響き渡るカエルの大合唱。遠い灯ははるか昔の記憶をよみがえらせた。居心地よく、二人は少年と少女に返った。あれは私が幼いころ夢に描いた旅だったのだろうか?

いつしかそれも終わりを告げ、二人はそれぞれの新しい道を歩み出した。


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