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飾りのない あいのことば

その日はなんだかイライラしていた。雨のせいで洗濯物は乾かなかったし、前日に夜更かししてしまったから寝不足だったし、買い物にいっても欲しかったものは売っていなかった。子供にあたるつもりはないが、アメをなめながら走らないでと言ったのに、案の定アメを飲み込んでしまった次男や、毎日毎日夜ギリギリまで宿題をやらない長男にもウンザリしていた。

子供達を風呂にいれたあと、ひとりで湯船に浸かってリフレッシュしている私の元に、次男が「じゃじゃーん」とお手紙を持ってきた。息子が持ってきた折り紙にはこう書いてあった。

「まますきだよ おこってるときでもだいすきだよ」

次男は人の心の変化に敏感だ。私は努めて怒らないようにしていたが、声色や表情で機嫌が悪いことを察知したのだろう。ここで「おこってるときでも」と書くのが次男らしい。こんな私でも肯定してくれる。大丈夫だよ、と励ましてくれる。思わず笑顔になってしまう。

その光景を見ていた長男。なにやら机にむかって作業し始めた。気づかないフリをして風呂上がりのスキンケアをしていること10分、長男がニコニコしながら近づいてきて、折り紙を差し出した。

長男が折り紙で作ったものは私の顔だった。笑っている。同じ手紙だと効果が薄いと感じた彼は、得意の工作で私の笑顔をひきだしてきた。感動していると、彼は満足そうに「あんまり褒められると照れる」といって恥ずかしそうなそぶりをみせる。

相手がどうしたら喜んでくれるかを考え、行動する。見返りを求めずに、ただ相手のために。子供って凄い。親は子供に「○○してあげたのに」とか「これだけ言ったらわかってくれるだろう」等期待や見返りを求めてしまう場合が多いと思う。

子供も親に褒められたいと思う時もあるかもしれない。でも、子供の動機は愛。見栄や自己都合ではなく純粋に行動する部分にうそがない。直球のことばだからこそ、心に響くのかなと思った。



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