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秘めたり公開してみたり。ミュージアムの進化:①博物館概論

学芸員課程で学んだ8章の面白かったところだけを振り返る、GW自主企画(笑)、1つ目は博物館概論です。
ていうか「博物館学」なんてものがあるんですね。そこからびっくりしました。博物館の歴史って覚えるの大変そう・・・と思ったけど、全然。むしろ、「博物館」というハコモノを通して人々が何をしたかったのか、その変遷が知れてとても面白かったです。ではさっそく!

●ミュージアムは”美の神の集う場” 

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ギリシア神話に全く詳しくないのでざっくりなご説明をしてしまうのですが、museumはギリシア語で”ムセイオン”、つまりムーサの神々がいる場所のこと。ムーサのお父さんは全知全能の存在であるゼウス、お母さんは記憶を司る神ムネモシュネ。遺伝子強い〜〜(神話だけど)。美や芸術の女神のような意味だそうです。
あと、美や芸術の領域の分け方も、今とは少し違ったようです。

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特に刺さったのはこの部分。

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つまり、museumは語源の中に「想像力に拠る分野」と「真実の追求をする分野」、異なる2つの視点を抱合しているんですね〜。

●そもそもなんで部屋にモノを集めはじめたの?

「知の巨大センター」として

歴史上有名なムセイオンは、今で言う博物館+図書館+大学+王立研究所のような、知の巨大センター(紀元前300年頃エジプトのプトレマイオス朝がアレキサンドリアの都に造らせたもの)。ここは研究がメインで展示はサブ的存在だったそう。
また、かの有名な哲学者プラトンやアリストテレスが設けた遊びの場の中にもムセイオン的な場あったそうだが、ここも展示や収集のためでなく、勉学や祭祀のため。
まだ「ムセイオン」が一般的でないときは、奉納物という形でモノが集まり展示されていたのですね。

next→ 「こんなの持ってる俺すごいだろ!(ドヤァ)」

少し意味が変わったのが15〜16世紀のヨーロッパでのこと。
「コレクションのための小部屋」が充実していったそうです。コレクション?小部屋?どういうことでしょう。

まず、コレクションは、普通の「所有」と何が違うのか。

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クシシト・ポミアン(1992)『コレクション ー趣味と好奇心の歴史人類学』より

モノを使うために集めるのではなく、集めるために集める。モノの用途が一度保留されることが、コレクションだそうです。

ではなんのために集めたのか?

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まず先に「部屋」を準備し、知への欲求や好奇心を満たすためにあらゆる分野のものが混沌と収集されていきました。その小部屋は権力や威光の誇示のためのもの。そしてこれは一般公開されておらず、それを見せること/見せないことが外交術にもなっていたそうです。
いうならば「俺こんなの持ってるんだぜ!すごいだろ!でも特別な人にしか見せないぜ〜」というところでしょうか。

閉鎖的で秘密性があることが、文化成熟の背景になっていたり、好奇心を掻き立てる形としての知のあり方になっていた。
『博物館の歴史・理論・実践』今村信隆:編


next→ 「みんなで一緒に考えてみよう!」

それに対して、近代的な博物館は意味合いが変わってきます。

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まず私人である学者のコレクションから本格化した「収集公開」の試み。訪問客を招き入れて情報交換し合う場であり、部屋自体も明るく開放的な場になっていたそうです。
代表的なのはイギリスのアシュモレアン博物館や、大英博物館。どちらも一般市民に開放され、研究や教育活動などの「人類の利益のため、”人々”のため」にコレクションが行われています。
こちらは「みんな〜集めてみたんだけどどう?一緒に謎を解き明かそうよ!」という感じですかね。

next→ 「これが俺たちの国だ!」

さらに進むと、ルーブル美術館のような王家のコレクションを母体としたところでは、コレクションを「国家の所有物」として一般に公開します。そのとき、ミュージアムの役割は「国民」の意識を作り上げ、自分たちのアイデンティティの起源を発見する場になっていきました。
(ルーブル美術館はフランス革命の進行中にオープンしたというのも初めて知ったのですが、美術館の役割がとても大きかったんですね・・・)

京都造形芸術大学での学びではないのですが、別の表現として理解しやすかった例をご紹介します。

この頃のミュージアムは「国づくりのための装置」だった。
一つの「館」に入って→出ると、教養のある人が出来上がる、ある意味”装置”である。
〜アートト アート・ヒストリー#1より〜

帝国主義、殖産興業、科学技術などなどあらゆることを教養として得られる。そして自国の文化を他国の文化と比べ、区別/差別することで「みんな、この国の国民でよかったね!」「博物館で教養を知ったから、あなたはもう文明的で洗練されたね!」と植え付け、アイデンティティを形成していく場、それがこの頃のミュージアムの役割だったのです。

面白い。この変遷めっちゃ面白くないですか?
京都造形芸術大学でもアートトでもまずここから学んだのですが、開始早々心を掴まれました。2回も。笑


さて、博物館概論はこれ以外にもたくさんの要素で構成されています。
超大事な日本の博物館の成り立ちも、もちろん。
もっと知りたいというあなたは、こちらからどうぞ。私のnoteはこの辺で。

→次は2つめ、博物館資料論です。

●「2020年GWを過ごす自主企画 学芸員課程の学びノートをnoteで公開」はこちらから

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