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花一匁


ぼくの名前を呼ぶ君の温もりが愛しくて、

そっと閉ざした心の奥にしまった。

ぼくに微笑む君の綻びが美しくて、

そっと強く抱きしめた。


でもいつかの花が枯れて、

いつかの嘘で雲がかかって、

あの日と同じ月は掴めないまま

水たまりに揺れた。


君はいつも涼しい音の中で、

潮の香りを拾い集めていた。

君はいつも靡く草原の中で、

優しく口笛をふいていた。


でもきっと愛しすぎたから、

きっと懐かしくなったから、

遠いあの星を見つめたまま

ゆっくり深く息を吸ったんだね。


この歌は誰にも届かないけど、

言葉よりもずっと遥か彼方へ飛ぶよ。

この歌はメロディーはないけど、

これからもずっと刻みつづけるよ。


どんなに糸が解れ合おうとも、

ぼくはぼくの道を歩き続けるだろう。

その面影を忘れてしまっても、

波の鳴る方へ追いかけていくさ。

だからぼくが描いた白い線は

君とだけで繋ぎ合わせて、

みんなで笑い合える日まで

夢を見るんだ。

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