最近のミヨ子さん 介護施設入所後、その十

その九より続く)
 ミヨ子さん(母)の転院の日の様子を孫娘(姪)が送ってくれた動画の中で、ミヨ子さんはだいぶしっかりした表情で、わたしが送った絵ハガキの文章も読めている様子だった。

 こんな感じなら、だいじょうぶかな、とも思う。

 しかし、施設入所以降1か月少々、この間の何回かの急変ぶりを振り返ると、高齢者の体調はいつどう変わるかわからないことも確かだ。

 転院先の病院では医師の説明のあと看護師さんがより詳しく補足してくれたようだ。入院手続きに同席してくれた孫娘(姪)の報告からかいつまむと

・当面は脱水症状対策で点滴を併用するが、点滴を外してしまわないよう拘束する。おむつを外さないためや、夜間の譫妄対策でもある。(同意書にお嫁さん(義姉)がサイン)
・回復にどのくらいかかるか、どの程度回復するかは患者さんによるので何とも言えない。3カ月くらいかかる人もいる。
・経験的には、1週間程度で今後の見通しが立つと思われる。その時点で医師と今後について相談する形になるだろう。
・退院後元の施設に戻るか、他の施設や在宅介護にするかは介護度も見ながら検討することになるだろう。
・当院での面会は予約制、週1回15分まで、1回2名まで。誤嚥の虞があるため、食品の差し入れは事前に申請のこと。トラブル・紛失防止のため、手紙などの私物は一切預かれないし、病室にも置けない。―――等など。

 孫娘が参考にと画像で送ってくれた「入院の手引き」のような資料によれば、前開きタイプの肌着やタオルなど、必要なものを必要数入院翌日に届けること、とある。その準備だけでもひと手間以上だ。

 さらに2名1室のベッド代は1日500円、おむつなどの消耗品はすべて病院指定(つまり病院が請求するがまま)、洗濯は週2回、1回500円と、積み重ねると追加費用もけっこうな金額になりそうだ。加えて、緊急入院の発端にもなった介護施設の利用料も継続して発生している。

 いったいひと月にどのくらい出費があり、それがいつまで続くのだろう――。かと言って「お母さんの年金を超える分はわたしが出す!」とも言えない。ミヨ子さんが介護施設に入所するとき、年金で賄えない分はミヨ子さんの貯金で間に合う間はそこから、ということできょうだい間で合意している。当分は貯金で対応できるだろうし、何より中途半端な情報でしゃしゃり出るのも憚られる。

 それよりも。

 病院側から「体調急変時の意思確認」を求められていた。全身症状が急激に悪化した場合や心肺停止の際にどうするか、の確認だ。
1.緊急搬送(転院)を含めた積極的治療を希望する。
2.当院でできる範囲での治療を希望する。
3.1.2.ともに希望しない。

 じつは、5月に帰省した際、カズアキさんと「万一の際の対応」について相談してあった。それによれば「3」である。ではあるのだが、ほんとうにそれでいいのか。「2」にしてもらえば、遠方から駆け付けるのにも間に合うのではないか。スマホの画像を見ながら逡巡する。

 しかし、これまでの長い人生、苦労が多かったミヨ子さんに「もっと頑張って」とは言えないだろう、と「その八」で考えたことを再び思う。

 その夜、わたしはカズアキさん宛てのメッセージに「急変時の対応は、5月に話したとおり『3』でいいと思います」と入れた。後悔するのかもしれないとうっすら思いながらも。(その十一へ続く)


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