ひとやすみ(酢の呼び方、鹿児島弁)

 鹿児島弁で酢は「あまん」という。

 「百二十七(刺身の食べ方)」で、ミヨ子の夫・二夫(つぎお、つまりわたしの父)が刺身が出されると、必ず酢を所望したことを書いたが、たしかにわたしが子供の頃は「あまんを」と言っていた。

 「酢が切れた」「酢を買いに行く」「酢が残ってるか見て」などの会話のときも、ほとんど「あまん」だった。ただわたしは「甘えん坊」みたいな語感があまり好きではなかったことと、「方言より標準語を使うのが先進的」という、いまとなっては妙な学校教育や社会常識の刷り込みから「あまん」は使いたくない方言のひとつだった。

 「あまん」の語源は「アマリ」で、米飯などの余りを壺の中などに入れて作るから、酸っぱくなる前に一度甘くなるから、忌み言葉の一種で「酢(酸)」に対して「甘」を考えた、など諸説あるらしい。忌み言葉という点では、鹿児島弁では「ス」は「穴」の意味があり欠損につながるので「余り」を充てた、という説もある。

 酢の方言としては「アンマリ」「アンマレ」「アンメリ」等各地にあるが、「アマン」は鹿児島県と南方の島々だけのようだ。

出典:『さつま語の由来』(牛留致義、昭和50年10月5日発行、南日本出版印刷)

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