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【#5】田舎の国道、死んだフリ

前回 4話 雨と寝床とタイミング

これはボクがスマホを手放して、広島から実家のある長野まで徒歩で目指した実話。
たった10日間の出来事とは思えないほど、多くを学び、成長できた最高の旅だった。

2020.6.2

5:00に起きた。昨日17:30に寝たので、11時間超と、かなり長い睡眠だ。
片付けや支度をし、5:45に出発。時計があるのはいいなぁ、としみじみ。

昨日はゆっくりしたので、その分今日は長い距離を進もうと決めた。
筋肉痛があるとはいえ、旅が3日目ということもあり、体が歩くことに慣れ始めていた。雨の心配も必要なさそうだ。

朝の涼しいうちに距離を稼ごうと、ただひたすらと歩き続けた。 
やはり最初の休憩までの間は、かなり順調に進める。
島根から広島にかけて通る一級河川「江の川」が姿を現した。「えのかわ」じゃない「ごうのかわ」だ。この名前を聞くといつも「谷繁」を思い出す。野球が好きな人ならわかる、あの「谷繁」だ。彼の母校が「江の川高校」なのだ。最近、その名前をあまり聞かないのは、校名が「石見智翠館」になっているから。たまに甲子園に顔を出すので、現代の野球ファンはこちらの名称のほうが馴染みがあるかもしれない。ボクもその一人だ。

江の川の近くを歩き始めてから少しして、休憩をすることに。
登校時間なのか、多くの学生が歩いている中、一緒になってボクも歩き、先に見える休憩場所へと向かった。
途中、すれ違う中学生が、不審者極まりないビジュアルのボクに挨拶をしてくれたのは、ほっこりしたよ。ありがとう。通知表の評価を上げてあげたい。そんなこんなで、川沿いにある休憩ができそうな広場に着いた。二時間くらい歩いたようだ。

休憩していると、川の対岸にある草むらから、鹿が二頭飛び出してきて、川を渡ろうとしていた。近くの山から下りてきたのだろう、朝になって帰るタイミングを逃したようだった。川をほとんど渡り終えたとき、近くから人が出てきたために、ビビッてまた対岸へと戻っていった。

野生の鹿は、人間が怖いのだろう。宮島の鹿に慣れていたボクからすると、あまり見ない光景だった。

充分に休憩したので、鹿とお別れしてまた進みだした。
この休憩で飲料・食料がすべてなくなってしまったため、コンビニを求めて歩いた。

歩き出してすぐに「ヤマザキショップ」の看板があったため、ルンルンで向かったら、まさかの廃墟。「看板しまえよっ!」という気持ちをこらえ、さらに進んだ。今日出発してから、まだ一軒もコンビニを見ていない。田舎の恐ろしさを肌に感じた。

干からびそうになった頃、かなり歩いてからだった。
やっと見つけたコンビニで水とパンを買った。

そこからさらに進んでから、今日二回目の休憩。肩が限界になり、「青河トンネル」の脇で休んだ。今日から国道54号をずっと道なりに進んでいるのだが、国道沿いはコンビニも無ければ、公園もないのだ。見えるのは先に続く長い道だけ。何度も心が折れそうになったけど、とりあえず笑っていれば良いことあるさ!と自分に言い聞かせた。長めの休憩をとって、また歩を進めた。

肩の痛みはなかなか取れないため、休憩をとったとて、すぐに限界が来る。
54号をひたすら歩き続けるも、真上にまで昇った太陽は容赦なく襲ってくる。歩き始めてから、1時間ほどでまた限界を迎えた。ただ、ここには休むところなんてなかった。
もうどこでもいい!と見つけた路肩で寝ころんだ。日向ぼっこは気持ちがいい。目を閉じるとすぐに眠りにつけた。

10分くらい寝ていたと思う。何か音が聞こえたので、目を開けてみると、目の前に知らないおじさんが立っていた。
どうやらボクの安否を確認していたらしい。すぐに立ち上がり無事を伝えると、ホッとしたような表情を見せてくれた。申し訳ないことをしてしまったが、日本も捨てたもんじゃないなと、ボクの心は嬉しい気持ちで溢れた。

さあ進む。どんどん進む。
事前に道を調べたときのメモに従って、国道を離れ少し町のほうへ入って行き歩を進めると、イートインスペースのあるファミリーマートが現れた。そこのファミマは、コロナに負けじとイートインを解放していたので、ボクはすぐにコンビニの中へと入っていった。きっとボクのために解放してくれてたのだろう、とでも言っておく。

ファミマは涼しいしカメラの充電ができるし。それはもう天国のような空間だった。その天国をより楽しむためにアイスも買ってやったぜぇ。疲れ果てたのちに涼しいところで食べるアイスは、、、言うまでもないだろう。というか、言語化するのが難しい。とにかく最高潮の幸せを感じた。

ファミマには1時間くらい滞在したと思う。嫌な客だ。ごめん。
周辺の道路情報が詳細に書かれた地図を立ち読みしてメモを取った。どうやら、10キロ先に「ふぉレスト君田」という道の駅があるみたいだ。しかも温泉もあるという。

今日の宿はここにすると決め、久しぶりの温泉を想像しながらファミマを後にした。


3日目 まだまだ続くよ、3日目は。

次回 6話 感謝の乾杯

Camino de Nagano マガジン


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