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めぐりあわせ。

新年度が始まりました。

先月から約束や予定がほぼキャンセルや延期になり、一緒に住んでいる家族以外の人と会うことが圧倒的に少なくなりました。
あらためて、インターネットがあってよかったな、と思います。
編集さんからいただく仕事メールの最後に、ちょっとした近況報告やお心遣いのひとことがあるだけで、ほっとした気持ちになります。
こんな時だからなおさら、お互いに交わすささやかな言葉ひとつひとつを大切にしたいと思いました。


そんなことを考えつつ、ここに残しておきたいことがあります。
3月は、宮崎のほかにもうひとつ、行く予定だった場所がありました。

それは大阪です。
大阪のテレビ局、MBSのアナウンサーさんたちによる朗読イベント「コトノハものがたりの世界2020」で、『木曜日にはココアを』を上演作品のひとつとして選んでいただいていたのです。
1995年からスタートしたこの恒例イベント、今年は3月1日に豊中市立文化センターで行われるはずでした。

ぎりぎりまで検討した結果、公演は中止に。
次々とイベント見合わせのニュースが入っていた頃だったので、やむを得ない状況だったと思います。通常のお仕事で忙しい中、夏から練習を重ねてきたアナウンサーさんたちにとって、どれほどつらい決断だったでしょう。

でも、ただ中止になっただけでは終わりませんでした。
舞台ではなくスタジオから、朗読の一部がYoutubeで生配信されることになったのです。
このようなことは初めての試みだったそうで、この機会にMBSアナウンサー公式チャンネルができました。

制約の多い中、最大限できることを……と、なんとかしてコトノハ朗読を皆さんに届けたいという熱い想いに心を打たれました。
先の見えない不安に、日本が本格的に脅かされはじめたころです。
こんなときのために物語はあるし、それを伝える人がさらに必要なのだと思いました。


3月1日(日)14時。私は夫とふたりでパソコンの前に座っていました。
朗読されたのは、
『れいぞうこのなつやすみ』著:村上しいこ
『明日死ぬかもしれないから今お伝えします』著:サトウヒロシ
『おならまんざい』著:長谷川義史
そして、『木曜日にはココアを』でした。

アナウンサーの皆さんそれぞれが、衣装や役作りにとても凝っていらして、スタジオのステージ演出も素晴らしかったです。

『木曜日にはココアを』は、12章あるうちの1章(ブラウン)、2章(イエロー)、12章(ホワイト)をきれいに構成してくださっていました。
ワタルくん、ココアさん、マスター、朝美、輝也パパ、たっくん、えな先生、添島さん。
みんな生き生きと動いて、笑ったり泣いたりしていて。
私の中にあったイメージの世界が三次元で展開されているのがすごく不思議で、言葉に表せない喜びでした。なによりも、皆さんすごく役にハマっていた!


思うように動けない今の状況は、正直に言ってもどかしいです。
数多ある本の中からココアを選んでくださって朗読してくださった、アナウンサーさんたちに会いたかった。「お疲れ様」と「ありがとうございます」を直接言いたかった。

ただ、大阪も宮崎も、私は予定していた3月には行けなかったけれど、なんとなく、そのこと自体が不運だとは思えないのです。

この朗読を大阪の会場で観たらやっぱりものすごく感動したと思うけど、映像だから見えたこと、伝わったことも確かにあって、どちらが良い悪いではなく、「あの本を選んでもらったこの回では、こういうスタイルだった」というめぐりあわせのような気がするのです。

結果として何がどういう方向に行くかは、きっとあとからわかることなのでしょう。
「今は今、できることをやる。可能性を開拓していく」という姿勢を、私はMBSさんから学んだように思います。
そして、翌週に発表を控えていた「宮崎本大賞」で、私にも何かできることはないだろうかと考え始めました。

そんな中で、翌日の3月2日、宮崎のりょう書店員Jさんとやりとりしているとき、ふと思いついたのがこのブログの開設でした。(そのときはスピンオフのことまではアイディアが出ていませんでしたが、その話はまた後日)
このnoteのヘッダー画像は、その日、お休みだったりょう書店員Jさんがツイッターに上げていらした宮崎の空です。


ところで、
私の夫は活字を本当に読まない人で、私の書いたものを一作も読んだことがありません。
どんな話なのか、どんな登場人物が出てくるのか、この朗読配信は夫に知ってもらうとてもいい機会でした。このめぐりあわせには、そんなメリットもあったのです(笑)!
さらに、作品の舞台のひとつでもあるシドニー在住の方や、国内でも遠方で申し込みをあきらめていた読者さんから「見られてよかった」というメッセージもいただき、本当に嬉しかったです。

そして、これまでご縁のなかった関西のアナウンサーさんたちが私にとってぐっと親しみを感じる大切な存在になったことに、心から感謝しています。
互いの状況が整ったとき、必ずお会いできることを願って。

コトノハ2020の生配信は、その後、作品ごとに分割されてアーカイブに残していただけることになりました。つまり、永久に観られる! 嬉しいかぎりです。
こちらにリンクを張ります。ぜひ多くの方にご覧いただければと思います。


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