「夜の街」への過度な圧力は治安の悪化を招かないか?

蝉の鳴き声がうるさい季節になりました。例年だと「猛暑の経済効果は何千億円」とか「冷夏で消費は何兆円減少」といったエコノミストの分析が、新聞やテレビで話題になります。でも、今年は難しいですね。消費者の行動は新型コロナ次第です。暑かろうが寒かろうが、あまり消費支出には関係なさそうです。

さて、7月の消費関連データの速報をみると、6月に比べ回復の勢いが落ちています。豪雨の影響もあるのでしょうが、主因はおそらく6月末で終了したキャッシュレス決済のポイント還元制度だと思います。ポイント還元制度が終了する6月に駆け込み需要が発生し、7月はその反動減に見舞われた模様です。消費増税と同じパターンですね。

政府としては、今後はうまくGo Toキャンペーンやマイナポイントにバトンタッチしたいところでしょうが、それらの政策も結局はポイント還元制度と同じで、いずれは効果がなくなって反動減に見舞われます。

もとより景気対策というものは、景気が本格的に回復するまでの時間稼ぎにすぎないケースが多いので、今回のケースは特に批判されるべきことではありません。

ただ、巨額の経済対策の恩恵に偏りが生じる事によって、社会の姿が変わってしまう可能性は無視できません。例えば、大規模な資金供給の副作用ともいえる株高は、低所得者層の不公平感や格差拡大を助長しかねませんし、「夜の街」への過度な圧力は治安の悪化や違法ビジネスの台頭を招く恐れがあります。

1920〜30年代に米国で施行された禁酒法は、違法な酒場「スピークイージー」の大量発生と、アルコール密売業者としてのギャングやマフィアの台頭を招きました。貧困を撲滅する目的で始まった過激な禁酒運動が、かえって社会不安を強めたというわけです。現在の我が国においても、コロナを殲滅するべく「夜の街」をとことん追い詰めた挙句、職を奪われた人々を反社会的な行動に駆り立てるリスクに配慮する必要があると思います。

禁酒法時代の米国を描いたミュージカル「 ONCE UPON A TIME IN AMERICA 」(脚本・演出/小池 修一郎)では、スピークイージーで儲けた主人公達が、禁酒法を廃止されてビジネスに行き詰まり、最終的に連邦準備銀行を襲撃します。日銀も気をつけて下さいね。


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