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50年先まで大事にできたら

〝今日も素敵なお洋服ですね〟

ベージュと黒のボーダーのセーターに、パープルのハイネックのシースルーインナー。
どちらもラメの糸が使われていてキラキラしている。

〝箪笥の奥から引っぱり出して着てるのよ。
もう50年以上も前に買ったのばかり。もったいなくて捨てられなくてね。90も近いっていうのにこんなの着てね。派手なんだけどね、ほら、昔社交ダンスやってたから、こういうキラキラしてるの好きでね。衣装にしてたものもこうやって着てるのよ、もったいないから。あら、ほら!こっちもキラキラしてるわ。まったくねぇ〟

とても50年以上前に買ったようには見えない。全然傷みがない。そもそもの服の質も良いものなんだろうけど、どれだけ丁寧に手入れして扱ってきたのか。

彼女に会って洋服の事を聞くたびに感心するし、心から尊敬する。

私は今持っている服を50年大事に着れるだろうか?
ちょっと想像してみても、無理だなという答えしか見つからない。10年前のものすら何も残っていないのだから。

聞けば70代まで社交ダンスを続けていたという。
肩や背中の筋肉を見ると納得だ。
華やかな衣装を身に纏い、ヒールで颯爽と踊る姿が想像できる。

好きだったことが出来なくなる
出来ていたはずのことが出来なくなる

今の私にはそれがどんな事なのか浅い想像しかつかないけれど…

社交ダンスをそろそろ辞めようと決めたとき、
諦めたとき、
限界を感じたとき。
年を取れば誰にだって訪れること、そう分かってはいても、切なさや悲しさやもどかしさや、色んな想いを感じただろう。

〝もったいなくて捨てられない〟
恥ずかしそうにいつもそういう彼女。
もったいないから、という理由はもちろん。だけどそれ以上に洋服1着1着に思い入れや、思い出も沢山沢山あって、手に取って袖を通すとあの頃のことが記憶に、身体中に、蘇るのだろう。
たとえもう踊ることができなくても、その感覚をこの瞬間も感じていられるなら、そんな幸せなことない。そう感じる。

簡単に捨てられる訳がない。
彼女の人生が詰まった洋服達なんだ。


最近購入したアフリカンバティックのパンツを洗濯して干しながら、仕事中のやり取りを思い出していた。

去年の今頃アフリカ布の存在を知り、ポーチやバッグなど取り入れるようになった。
鮮やかで大胆な色と柄。そのエネルギッシュな雰囲気に惹かれて。だけどそれまでの私は無地で控えめな色の服や物ばかり持っていたし、最初はポーチ
1つ買うことも迷っていた。

けどある日、誕生日だからという理由をつけてバッグを選び始めた。

そんなに派手な色で大丈夫?
私に似合う?
すぐ飽きちゃうんじゃない?
合わせにくいよ、きっと…

色んな声が頭の中をぐるぐるした。

最初は茶色系の何にでも合いそうなものをまず買ってみようと思った。けど、どうにも気が進まない。何故かマゼンタピンクとグリーンの鮮やかなバッグがやたらと視界に入ってくる。

可愛い。
それがいい。

そうか。今まで私は自分の〝好き〟よりも、周りの目を優先させてきた。
大人しそう、優しそう。周りの求める自分で在ろう。

ホントはつまんなかった。
別に大人しくも優しくもない
苦しかった。
周りに合わせてる自分が嫌いだった。

辞めよう、そんな自分。
このバッグを迎えてみよう。

想像をはるかに越えて可愛いバッグだった。
なにより、〝私に合ってる〟と心の底から思った。
意外とにどんな服と合わせても可愛い。
ビックリの連続だった。

それからインスタや色々なところでアフリカ布を
チェックするようになった。

やはり、ここまで来ると洋服が気になる。
可愛い。ただ、柄物ってあまり着ないしなかなか
着る勇気がでない。

スカートやワンピースも素敵だなとは思うけど、
パンツ派の私には難しい。買っても着る頻度は
かなり少ないだろう。
シャツなどのトップス。目立つだろうなぁ…
できればパンツが欲しい。ワイド過ぎず、テーパードでもない、ストンとしたストレートパンツ。
エスニックエスニックしそうな感じじゃなく、穿けそうなもの…。

見つけてしまった
こちらで。
https://instagram.com/africanbatik._jua?igshid=YmMyMTA2M2Y=
2つ迷ったんだけど、やっぱり最初にピンときた方をお迎え。

届いてさっそく穿いてみた。ストンとしたストレート、丈感も完璧。色も柄も最高。穿き心地も良い。
何を合わせても大丈夫。着方次第で1年中いける気がする。
そして何よりも〝私に合ってる〟そう感じた。
こんなに心が満たされる服に出会えたこと、今まであっただろうか?いや、無いから何も残ってない。
飽きてしまったり、傷んだり、色々だけど…

次の日ドキドキしながら穿いて出掛けたけど、
似合ってる!と色んな人に言ってもらえて安心した。あぁ、私はこれで良いんだなって。
なんだかよく分からないけど、心の中に自由を感じた。

大事にします

生地も目が詰まってしっかりしていて、長持ちしそう。何色も色を重ねて、ろうけつ染めという技法を使って、作られているそう。その色や柄、色の重なりをじーっと見てしまう…
知れば知るほど面白い。

大事に穿こうと思います。
それこそ、このパンツなら50年大事に穿き続けたい。生きてるか分からんけど。

〝好き〟に素直に正直に。
そんな風に生きていけたらいいな。


〝これ?50年も前に買ったのよ〟

今の彼女と同じ年齢かぁ…
そんな事が言えるといいな。
このパンツをオシャレに穿きこなして
チャキチャキ動けるお婆ちゃんにならないとね。






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