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「沖縄戦の実相に触れるたびに」とガザ

 明日、6月23日は日本軍の組織的戦闘が終結した「沖縄慰霊の日」だが、沖縄県平和祈念資料館の「むすびの言葉」には下のように書かれてある。

「沖縄戦の実相にふれるたびに
戦争というものは
これほど残忍で これほど汚辱にまみれたものはない
と思うのです

この なまなましい体験の前では
いかなる人でも
戦争を肯定し美化することは できないはずです

戦争をおこすのは たしかに 人間です
しかし それ以上に
戦争を許さない努力のできるのも
私たち 人間 ではないでしょうか

戦争このかた 私たちは
あらゆる戦争を憎み
平和な島を建設せねば と思いつづけてきました
 (後略)」

沖縄県平和祈念資料館の「むすびのことば」=2022年6月30日、糸満市摩文仁 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1007743

 戦後日本の戦争否定の考えは、広島や長崎の原爆とともにこの言葉が原点だった。

 沖縄県議会は昨年12月22日に全国に先立ってパレスチナ自治区ガザでの即時停戦を求める決議案を全会一致で可決したが、決議文の中には「凄惨な沖縄戦の記憶と重なり、多くの県民が心を痛めている」という言葉が入っている。沖縄での犠牲者は30万人を超え、沖縄の実に4分1の人々が亡くなった。

 住民を巻き込む凄惨な沖縄戦の実相は、戦闘員よりも市民の犠牲のほうがはるかに多いガザでの戦争と重なる。米軍との戦闘に日本軍が住民の協力を強制したり、住民の中に潜んで日本軍が戦闘を行った沖縄戦は、攻められる日本軍も当初から住民の多数の犠牲を想定するものであったし、また空爆や砲撃を多用した米軍も市民の安全などまるで考慮することなく戦闘を行った。

「沖縄戦の生き残りは皆、艦砲射撃の喰い残し」 強烈な民謡を生んだ作曲家の壮絶な人生【慰霊の日企画 #あなたの623】 https://news.yahoo.co.jp/articles/3fab92e2788e1aaddfbac7a0ebf612ca2d9075a9

「家もご先祖様も親兄弟も〔艦砲射撃〕の的になり 着るもの食べるものも全くなかった。ソテツを食べて暮らしたよ。(あなたもわたしも 君も僕も艦砲の食い残し)♪」比嘉恒敏(こうびん)「艦砲(かんぽう)ぬ喰(く)ぇー残(ぬく)さー」(艦砲射撃の喰い残し)

 この歌詞などは飢餓状況に置かれながら、空爆や砲撃、さらには銃撃にさらされる現在のガザの人々の現状に重なる。

 イスラエル政府は武力でハマスを制圧することで、イスラエルの平和や安全を考えているが、武力で平和を創造できないことは、米国によるアフガン戦争、イラク戦争がいやというほど証明している。日本政府も特に米国との集団的自衛権を確立した安倍政権以降、米国の軍事力を後ろ盾とする「平和」を構想するようになっている。

2021年の沖縄慰霊の日 広島・長崎では全国規模の黙とうをしますが、沖縄ではしないですね。やるべきでしょう。https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/774789


 また、「むすびの言葉」にある平和な島を建設せねばという沖縄の人々の想いにも、日本にある米軍基地の73.9%が沖縄に集中することを考えると、日本政府は応じていない。冷戦後の中東地域の紛争にも、沖縄など日本における米軍基地が訓練や兵器の補修の場として使用されてきた。沖縄の米海兵隊はイラク戦争やアフガン戦争に真っ先に展開した。沖縄を台湾危機の最前線にする政府や国会議員たちの議論は、「平和な島を建設せねば」という沖縄の人々の心情を踏みにじっているかのようだ。

 日本政府は沖縄戦の実相を忘れ、中国との戦争を想定し沖縄の基地化を進める。他方、イスラエル政府は、ユダヤ人へのナチスによる大規模な残虐行為であるホロコーストを忘れ自らがジェノサイドの主体となっている。

 下はヴァイツゼッカー元ドイツ連邦大統領の言葉だが、沖縄戦やホロコーストの過去に目を閉ざし、その過去を忘れている政治家などへの警鐘になっていることは言うまでもない。

 「問題は過去を克服することではありません。さようなことができるわけはありません。後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはまいりません。しかし過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです。」


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