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中国が台湾に侵攻すれば日本が参戦する? ―無関心が日本を戦争に向かわせる

 「ウォールストリートジャーナル」(WSJ)は15日、中国が台湾に侵攻しても日本が参戦する可能性は高くないと報じた。いつの間にか平和主義の憲法をもつ日本は戦争への入口に立つような国になっている。

 同記事によれば、米国は台湾を攻撃する中国の潜水艦を見つけ出す役割を担ってほしいと考えているという。沖縄に米軍5万4000人が駐留しているし、台湾に最も近い国として台湾有事の際に日本の軍事的支援が必要というわけだ。朝日新聞が5月に発表した世論調査では、中国との関係について「外交や経済での関係を深める」が70%で、「防衛力を強化する」26%を大きく上回った。圧倒的に多くの国民が戦争を望んでいないことがわかる。戦争になれば、現在のウクライナと同様に中国のミサイルやドローンが日本の各都市に飛来するが、ミサイルやドローンを100%迎撃して撃ち落すことなど不可能だ。そうならないようにするのが政治の役割だ。日本政府は反撃能力を行使して中国と戦争になった場合、日本に対する攻撃について国民に十分説明を行っていない。

【非戦の為の2冊】 半藤一利『墨子よみがえる 〝非戦″への奮闘努力のために』 巻末に半藤さんが「日本の墨子」と評した中村哲医師との対話を収録 宮田律『武器ではなく命の水をおくりたい 中村哲医師の生き方』人は食べ物があれば戦争はしないとアフガニスタンの砂漠に水を引き続けた中村医師の生涯 https://twitter.com/Heibonsha_L/status/1395738259381055495


 日米安保では事前協議で、米国の戦争が日本の防衛以外の目的で行われ、それが日本の安全保障の利益にならないと判断された場合、日本は米国の戦争への協力を拒絶できるが、拒絶できるような胆力が岸田首相をはじめいまの与党の政治家たちにあるとは思えない。

与党の議員の一部は日本から遠く離れた台湾海峡の問題で中国と戦争をしたいらしい。実に愚かしい。 https://mainichi.jp/articles/20170112/k00/00m/030/064000c


 台湾有事の際に日本が参戦する可能性があるという印象を米国に与えているのは、岸田政権が反撃能力の保有や、防衛費倍増を認めてしまったからだ。それ以前に2015年の安保法制の時に、米軍の後方支援が可能になり、日本の存立危機事態では米軍への攻撃に日本も戦うこと可能になった。この2015年の法案成立過程で、野党議員たちは台湾有事に巻き込まれるのではないかと再三質問したが、安倍元首相は仮定の話には答えられないと言い続けた。

井上ひさし 無関心が戦争を招く https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=17566


 しかし、安保法制が成立すると安倍元首相は「台湾有事は日本有事」と語るようになり、また麻生太郎副総理(当時)は、台湾有事は日本の存立事態と語るようになった。安保法制成立過程で安倍元首相は日本の存立事態、つまり日本の独立が脅かされ、日本国民の生命が失われる明白な危険が生じる場合として、「ペルシャ湾が機雷で封鎖されたようなケース」と説明していたが、法案が通ると存立事態は日本に地理的にずっと近い台湾海峡となった。

 1960年日米安保改定の時に、ハナ肇氏は、「岸さん私たちの意見も聞いて! スターに聞く 三木鮎郎の街頭録音」『週刊平凡』1960年6月8日号「週刊平凡」)で三木鮎郎氏のインタビューに答えて「安保改定を自民党が強行したことにはすごく反対だ。新安保の内容は国民一人一人に不明確にしか理解されていないのに、これじゃコソドロのやり方だ!』」と語っている。2015年の安保法制の成立過程もまさにそのような印象がぬぐえなかった。安倍元首相や麻生氏の発言に接するにつれ、「コソドロのやり方」という言葉が頭をよぎる。

SNSで揺らぐ平和意識 戦争容認、簡単に「いいね」 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65424360U0A021C2CE0000/


 瀬戸内寂聴さん(1922~2021年)は「いい戦争はない。絶対にない。聖戦とかね。平時に人を殺したら死刑になるのに、戦争でたくさん殺せば勲章をもらったりする。おかしくないですか。矛盾があるんです。戦争には。」と言い続けた。(東京新聞2021年11月11日)

平和の反対は戦争ではない。平和と戦争に対する無関心である。 エリ・ヴィーゼル


 WSJの記事の中では慶応大の森聡教授が「台湾を守るために命をかける意向があるかという質問をすれば、現在の日本国民の90%は『ない』と答えると思う」と話したことが紹介されている。安全保障上の議論があまりに飛躍して、日本防衛がいつの間にか台湾の防衛にすり替わってしまった。よほど日本を戦争に近づけたい人々がいることに気づかされる。

 教育学者の太田堯氏(1918~2018年)は、「平和」の反対に「無関心」を位置づけ、現在は「国家」「郷土」とかが強調されるようになり、子どもたちの魂が抜き取られ、それがやがて戦前のような時代に逆戻りしていく危険性があると警鐘を鳴らした。防衛費増額が日本の安全保障に役立つとは思えない。軍事費の増額は軍拡競争をもたらしていくに違いないが、日本政府・与党が考える仮想敵である中国は日本よりもGDPの総額が大きい国で、軍拡競争などしたらすでに岸田政権が考えているように増税に次ぐ増税で日本の経済や国民生活を疲弊させるだろう。

戦車に乗ってポーズをとる政府首脳など世界を見渡してもほとんどいないだろう

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台湾の人々が野球を楽しめるのは当然だが平和だからだろう
台湾のチアリーダー、林襄(リン・シャン)


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