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政治的敗者となるイスラエル -政治的正当性を競う国際法 

 国家は国際法に照らしてその外交・安全保障政策の正当性を他国と競っている。多くの場合、国際法には罰則はないが、国際法を大きく逸脱した行為にはついては国連による経済制裁や、さらには1991年の湾岸戦争のイラクのように武力制裁が科せられる場合がある。国際法の観点から正当性がなければ、その国のイメージは低下して、諸外国との経済・人的交流が円滑に進まないなど有形無形の不利益を被り、政治的な敗者となる。

アル・パチーノ イスラエルの歴史を見れば誰がテロリストかわかるはずだ。 https://www.pinterest.jp/Freeman797/al-pacino/


 イスラエルは世界で最も国際法に違反する国と言ってもよく、占領地で入植地を拡大するなど、被占領者の土地や財産を奪う行為を公然と行い、占領地からの撤退を求める国連決議にも従うこともない。

 イスラエルは2021年5月、東エルサレムのシェイク・ジャッラ地区のパレスチナ住民の立ち退き命令に抗議するパレスチナ住民の制圧をイスラムの聖地アル・アクサー・モスクの敷地内で行い、イスラム世界から強い抗議や非難を受けた。ガザのハマスがイスラエルの措置に反発してロケット攻撃を行うと、テロリストの殲滅を口実にガザを空爆して各国のメディアが集まるビルを破壊したり、200人以上のパレスチナ人の犠牲者を出したりするなど、文民施設や文民を軍事攻撃の対象とした。

 国連憲章は人権と基本的な自由への尊重をその最も基本の原理にしている。また、世界人権宣言は、生命、自由、安全、財産、その他の人権について具体的に触れている。さらに、1949年のジュネーブ協定、特に1949年8月12日の条項は、戦時における文民の保護に関するもので、具体的に戦争中の文民に対する人権侵害の禁止について規定している。

 2021年5月、アイルランド議会はイスラエルによるパレスチナの領土を併合する犯罪を非難する決議を成立させた。国会が今回のガザ攻撃を受けてイスラエルを非難する決議を通過させたのはアイルランドがヨーロッパで最初の国である。同時に、ハマスのロケット攻撃についても批判を行った。国連憲章は、その加盟国が武力によって領土を獲得することを禁じている。武力による領土併合は重大な国際法違反であり、EUはロシアのクリミア併合に対して経済制裁を科し、またニュルンベルク裁判でも、ナチス・ドイツによるポーランドやチェコスロバキアの併合は戦争犯罪とされた。


 決議案を提出したシン・フェイン党のジョン・ブラディ議員は、「今晩、アイルランド国民はパレスチナ人の歴史的勝利を確実にした。ダイル(アイルランド議会)はイスラエルのアパルトヘイト国家によるパレスチナ人の扱いに対する強い不快感を表明し、アイルランドは明確な言葉でイスラエルが占領したパレスチナ人の土地の収奪を非難するヨーロッパ最初の国になった」と述べた。

 パレスチナの人権を擁護する団体や活動家たちは、ナショナルジオグラフィックのドキュメンタリーの中の「先住民」というシリーズのホスト役からイスラエルの女優ガル・ガドットを降板させることを要求している。ガドットは、先住民のパレスチナ人の人権を侵害する国の国民であり、イスラエルでパレスチナ人の土地を奪う兵役に従事したことがあり、またソーシャル・メディアでイスラエル軍の活動を賛美することも行ってきた。

 ハリウッド映画で活躍する女優まで厳しい非難にさらされ、エルサレムでの騒擾やガザ攻撃でもイスラエルは政治的敗者となった。1982年にレバノン侵攻を実行したメナヘム・ベギン首相はPLOをレバノンから軍事的に追い出すことには成功したが、イスラエル軍が支援する勢力がパレスチナ難民キャンプで虐殺を行ったことで、国際社会の非難を浴び、首相を辞任し、さらに政界から引退したことがあった。

アイキャッチ画像はパレスチナ旗を掲げるセルティックのサポーターたち
アイルランド


パレスチナ旗を胸につける女性

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