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「7時のニュース/きよしこの夜」 ーサイモン&ガーファンクルの平和への祈り

 ロシアのウクライナ侵攻以来、戦争の悲惨な様子がニュースで伝えられるようになった。サイモンとガーファンクルの「7時のニュース/きよしこの夜」は平和と反戦への祈りが込められ、アメリカの反戦歌の一つとされ、「List of anti-war songs(反戦歌のリスト)」のウィキペディアの中にも含まれている。二人の美しいハーモニーで歌われる「きよしこの夜」は、静穏、平和な世界を願ったものであり、それと1966年に録音された当時のベトナム戦争や公民権運動などのニュースが重なっている。(歌の動画は
https://www.youtube.com/watch?v=9-KT4OW_A8E にある。)
 ベトナム戦争に関しては、下のようなニュースが読み上げられている。

「Former Vice-President Richard Nixon says that unless there is a substantial increase in the present war effort in Vietnam, the U.S. should look forward to five more years of war.
In a speech before the Convention of the Veterans of Foreign Wars in New York, Nixon also said opposition to the war in this country is the greatest single weapon working against the U.S.
リチャード・ニクソン元副大統領は、ベトナムにおける現在の戦争に大きな成果が見込めない場合、合衆国はさらに5年間戦争を延長すべきだと語った。ニューヨークにおける退役軍人会の集会でのスピーチでもニクソン氏は、この国の戦争への反対者たちが合衆国に対する最大にして、唯一の凶器だと語った。」

 戦争遂行において反戦運動が最も恐れる現象であるという点では現在のロシアのプーチン大統領を彷彿させ、リチャード・ニクソンも戦争推進者だった、戦争の主体はロシアとアメリカで異なるものの、戦争の本質には変わりがないことをあらためて示している。

ニクソンを追い詰めたジャーナリストたちを描く 映画「大統領の陰謀」


 トルコ製のTB2攻撃用ドローンがロシア軍の車列に命中し、大規模な損害を与えている様子が映し出された動画が拡散している。動画を観ている人々の間からは拍手と歓声が上がるのは、ロシア軍の侵攻に対する苦々しく否定的な見方が背景にある。トルコのドローンは2020年のアゼルバイジャン・アルメニアの紛争(第二次ナゴルノ・カラバフ紛争)でアゼルバイジャンの圧倒的優位をもたらした。

 ベトナム戦争で悲惨な様子がメディアを通じて世界に紹介され、アメリカ国内の反戦運動が高揚する背景となったために、アメリカは1989年のパナマ侵攻、1991年の湾岸戦争あたりから戦争の取材規制がかかるようになり、特に湾岸戦争やイラク戦争では直前のTwitterのようにテレビゲームのような動画が多く紹介されるようになった。これでは戦争の実相は伝わらず、地上での悲惨な実態はわからない。

 ロシアの文豪トルストイは、反戦思想の出発点はクリミア戦争に従軍した時の恐怖から生まれた。「恐怖、他の一切の思想、感情を押しのけてしまうような冷たい恐怖が、彼の全存在をひっつかんだ。彼は両手で顔をおおった。また一秒が経過生まれたとされている。した。一秒ではあるが、その間に、感情・思想・希望・回想の一大世界が、彼の脳裏をひらめき通った。」(中村白葉訳『5月のセバストポリ』)

ローマのコロッセオ前で


 国際社会は過去の数々の悲惨な戦争を経て、その秩序を確立、維持するものとして、国際法を成立させてきた。国際法には罰則はないが、それぞれの国家は国際法に訴えて政治の正当性を競うが、国際法に違反した場合はその代価、代償は大きい。プーチン大統領の国際法に違反する行動は、ロシアをすでに政治的敗者とし、ロシアを国際社会から排除する「パーリア国家」にしている。気の毒にもロシア国民まで色眼鏡で見られるようになり、肩身の狭い思いをするようになっているだろう。プーチン大統領には戦争で何かいいことがあったのかと問いたい。

アイキャッチ画像は7時のニュース、きよしこの夜
サイモン&ガーファンクル
http://www.soundfinder.jp/products/view/1672587

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